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 石を地面に埋める、あるいは地面に挿して妖邪を鎮めるのは、石の辟邪法の基本といえる。漢代、つねに鎮宅に用いるのは石だった。『淮南万術記』には「四隅に石を埋めれば鬼なし」の法術が記される。「蒼石四つ、桃枝七本を取り、桃の弓でこれを射る、また取り戻す。四隅に弓矢を埋める、ゆえに鬼の禍なし」。

 のちに類書がこの条を引用して証明するが、文において違いがあった。「四隅に丸石を埋め、桃の弓七本を混ぜる。すなわち鬼の禍なし、今、これだけにあらず」。あるいは「年の瀬に、家の隅に丸石を埋め、桃の弓七本を混ぜる。すなわち鬼の役なし」。バリエーションもある。「家の四隅に丸石を埋め、桃の種七つを置く。すなわち鬼の禍はなし」。

 全体的に見ると、この種の鎮宅術の基本内容には二つの項目が含まれる。まず四個の丸い青い石を用意する。そして七つの桃弓を用いて七本の桃枝から作った矢を象徴的に地から放つ。それを取り戻したあと、弓矢と青い石をいっしょに住宅の四隅に埋める。七組の弓矢と四個の青石を均等に組み合わせる。それゆえ原文は「桃弓七本を混ぜる」と述べている。すなわち桃、石とも自由に組み合わせることができるということだ。桃木はもともと辟邪霊物。桃木と青石を埋めることによって、鬼を制圧する鎮宅石の力をさらにパワーアップするのである。


 漢代以降、埋石鎮宅はかなり流行した。『荊楚歳時記』は言う、「十二月の終わり、鎮宅のため、家の四隅を掘り、それぞれに大石を埋める」。

北周庾信(ゆしん)の『小園賦』に「宅神を鎮めるため、石を(埋)める。山精を厭い、鏡で照らす」の一節がある。

 『医心方』巻二十六に引く『如意方』に言う、「黄石六十斤を亥子の間の地、および鶏の巣の下に置けば、六畜が栄える」。亥子の間とは西北と北の間の方角である。この種の法術は六畜繁栄を目的としていて、そのために鎮宅術を行う。後世の道士は符籙を用いて鎮宅を行うことが多いが、術士には古銭を用いて鎮宅を行う者もいた。これら種々さまざまな鎮宅術は、青石鎮宅術から派生したと考えられる。