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 鬼怪が畏れる灰土の観念からさまざまな灰土の使用法が生まれた。『日書』「詰篇」に言う、嬰児が死亡することは多いが、これは水中の精怪「亡傷」(水亡傷)が命を奪って逃げたからである。この場合まず、四面を灰で塗った堅固な灰室を作る。内側に草(ふそう)を掛け、「亡傷」を捕まえる。草でこれを切り殺すのである。よく煮てこれを食い、永遠に禍は除かれる。

 また言う、女子が狂者になったわけでも、痴れ者になったわけでもないのに、歌いだしたり、歌曲が聞こえたりする。これは「陽鬼」が附体したせいである。北を向いて成長するある種の植物の花弁十四枚をよく焼いて灰を作る。この灰をご飯に混ぜて食べさせると、陽鬼は去っていく。「詰篇」の記述によると、秦国巫師は、灰土を使った巫術を採用している。しかしこれら灰土を内服する治療は注意をしたほうがいい。


 馬王堆から出土した『雑療方』は言及する。井戸の上に五尺(1m半)平方の範囲の泥を塗る。たちの悪い犬の糞尿を避けるためである。戸(玄関)の上に五尺平方の土を塗る。これによって夫婦不仲を改善する。家の正門の左右に五尺平方の泥を塗る。これで貴人に好かれるようになる。床の下に七尺平方の泥を塗る。これで悪夢が除かれる。戸に五尺平方の泥を塗る。これで嫁姑のいさかいを収めることができる。閈(街中の大門)に五尺平方の泥を塗る。子供がよく泣くのを治す。こうした泥塗り法は、古代の巫術や医術に大きな影響を与えてきた。