第2章 20 新しい布、赤い糸、五色の糸
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新しい布が巫術(呪術)の霊物(霊妙なもの)になっていく過程は、白茅が神異なるものになっていく過程とよく似ている。織りたての麻布は比較的清浄で、祭祀、葬送儀礼の際の神霊と関係のある活動に用いられた。また織りたての布はつねに神の発生と関係があり、祭祀者はそれが神性を帯びることで邪悪なるものを取り除く効能を身につけていくことを認識する。のちにすべての新しい布が神事に関連するわけではないが、それは邪悪を避ける霊物(霊妙なもの)とみなされるようになった。
周代の比較的規模の大きい祭礼では、供え物が置かれた机の上に三尺(90センチ)ほどの新しい布がかけられた。これは当時道布と呼ばれた。周代の祭祀の慣例から考えるに、祭祖のとき、同姓族の祖先の代表を探す必要があり、直接供え物を捧げてもてなさなければならなかった。
かつては箸を使って食べる習慣がなく、祖先に扮した人は手を使って食べなければならなかった。油まみれの手で食べる「神」は手拭いでいちいちこすらねばならなかった。「道布」は「神巾」となったのである。神をただ喜ばすために、清潔な新しい布が求められ、神巾が作られた。
『周礼』によると、天子の祭礼のとき、巫師(シャーマン)の長「司巫」が責任を負って道布と白茅を提供した。この条の記述から二つの面の情報が読み取れる。一つは、当時人々は祭祀用の新しい布を非常に神秘的なものとみなしていた。それゆえ司巫はとくに責任をもって準備を進めたのである。第二に、巫師が提供する茅藉は日ごろ大量に使用する白茅だったが、それと同様、巫師が提供する新しい布は日ごろ使用するものだったのである。