(11)呪符
唐代の人は門によく虎の画を描き、聻(せき)文字を書き、疫癘(えきれい)すなわち伝染病をやませることができた。この聻文字は実質、特殊な避疫符(疫病を避ける護符)といえた。一部の方術書が紹介しているように、傷寒病(腸チフス)を家から駆逐するために、手に鬼という字を書く。すると伝染を防止することができる。
宋人洪邁が言うには、僧が提供した「範□飛」の三文字は辟疫符であり、民間に広く流布した。豫章の家々ではこれを祀ったという。[□1は竹冠、病ダレ、其、足からなる文字]
清代のある日、「呉に大疫がはやり、居民の多くが□1、□2、□3三字を門首に貼り、これで疫病を駆逐できるという」。[□2は竹冠、病ダレ、具、足。□3は病ダレ、捉]
こういった駆疫符は、洪邁が述べる三文字が変化したものかもしれない。
道教符籙派の著作はいつも駆疫符呪についての専門の章を設けている。たとえば『太上洞玄霊宝素霊真符』巻上「理殟(瘟)病」に八十八道符が記されている。そのなかには呑符、佩符、張貼符などが含まれる。