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<禁疣>
疣(いぼ)の俗称は瘊子(こうし)である。『五十二病方』にはたくさんの禁疣法が載っている。たとえば疣のある者は穀物などの収穫物を抱いて立つ。別の人がそばで「あなたはなぜこのようなことをしているのか」と聞く。疣のある者はただちに答える。「イボができてしまいましたので」。彼は収穫物を投げ捨て、ここから立ち去る。このとき振り返ってはならない。
ある月の晦日(月末日)、井戸辺に行き、破れた箒(ほうき)で十四回イボを掃いて呪文を唱える。「今日月晦、掃疣于北!」(今日は晦日、北でイボを掃こう)。呪文を唱え終えると、箒を井戸の中に放り込む。
晦日午後、いくつかの鶏卵大の土のかたまりを家の中に放る。疣の生えた男子は七つ、女子は十四個の土塊である。夜間に家にやってくると、禹歩で回りを三周する。南から北へ土塊を並べる。そして呪文「今日月晦、磨疣于北!」(今日は晦日、北でイボをこする)を唱える。土塊でイボをこすったあと、その土塊をもとの場所に放る。そのとき振り返ってはならない。
晦日、寝室の後ろに至り、呪文を唱える。「今日晦、磨疣于寝室之北!」(今日は晦日、寝室の北でイボをこする)。そのあと寝室の墻壁(部屋の四囲の壁)の上でイボを十四回こする。
某月朔日(一日)、葵の茎を用いてイボを十四回こすり、呪文を唱える。「今日朔、用葵茎磨疣!」(今日は朔日。葵の茎を用いてイボをこする)。また十四本の蔱(さつ)草の根、それが路傍の蔱草の根でもいいが、沼や深淵に投げ込む。
イボをこするのが素手であってもいい。ある月の晦日、部屋の北でイボをこする。男は七回こすり、女は十四回こする。こすりながら、呪文を唱える。「今日月晦、磨疣室北!」(今日は晦日、部屋の北でイボをこする)。一か月外出しなければ、イボは自然に消え失せる。
この類のイボ治療法は後世、よく見られるようになった。『千金方』巻二十三に言う、「毎月十五日の月が正中のとき、すりきれた箒で望月を三十七回掃くと、瘥(治)る。
『医心方』巻四に引く『如意方』に言う、青い虹(鮮やかな虹)に対し、床を掃く古い箒を手に持ち、呪文を唱える。「某甲患疣子、就青虹乞瘥、青虹没、疣子脱」(イボを患う〇〇よ、鮮やかな虹にイボの治療を願う、虹が消えるとともにイボがなくなっていることを)。
呪文を唱え終わると、箒は大路口に捨てる。振り返ることなく、戻ってくる[大路口は大きな道路の始まる地点のこと。T字路のことが多い]。これらの法術と漢代の破箒掃疣法は一脈通じるものがある。
『范汪方』が記す治疣法は以下の通り。晦日の夜、厠所(トイレ)へ行き、すでに取っておいた十四本の草を持ち、一つ一つ眼前で揺らしながら呪文を唱える。「今日月晦、疣驚去!」(今日は晦日、イボよ、驚いて去れ!)。
翌月一日のあと、故人が用いていた枕や座布団でイボを十四回こする。するとイボはなくなっている。ここにおいて強調しているのは、晦日に法術をおこなうこと、草でイボを十四回こすることである。これは前漢から伝わる古い処方である。
『如意方』に記されるもう一つの方法は、「雷が鳴るとき、手でイボを擿(と)る。そして雷に放ること二七(十四)回。すなわち借りた雷電の威力でイボを除去できる。