第3章 13 竜蛇毒虫よけ 

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 伝説中の蛟竜は雲を興し、雨を播く水中の精怪であり、水虫(水中の毒虫)の長である。古代において舟を使う人はみな蛟竜が舟を転覆させると信じていた。それに対処するために秦代以前の巫師(シャーマン)は水に投擲して鎮める呪術を考え出していた。牡橭(にれ)の木の幹の上に孔をあける。象牙を二本の幹の孔に通す。一本ずつ縦と横に並べ、十字架の形を作る。これを水底に沈めると、水神竜や罔象(ぼうぞう)を殺し、深淵を山稜に変えることができると巫師は認識していた。

 『周礼』には壺涿氏という小官が出てくる。水虫(水中の毒虫)を駆除するのが仕事である。彼らは「牡橭にれ)の木(の棒)と象牙を交叉させて十字形のものを作り、これを水中に沈めて」水神を駆除する。これは彼らが組織を作り、実施する。壺涿氏は水虫(毒虫)を駆除するのに瓦太鼓を叩き、水に「焚石」を投擲する。焚石を投げると、水の毒虫を熱死させることができる。これ(熱死させる)は巫術(呪術)ではない。しかし瓦鼓を叩くのは伝統巫術の鼓騒法である。この小官はつねに鼓を叩いて毒虫を攻撃している。それゆえ『周礼』の作者は彼らを壺涿氏と呼ぶ。「壺」は瓦鼓を指し、「涿」は叩くことを意味しているのである。



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