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清代、蘇州と漳州に蛇王廟が立っていた。伝えるところによると、四月十二日を蛇王華誕[誕生日の尊称]とし、当日になると、蘇州人は群衆となって押しかけ、「香を焚いて符(おふだ)を求め、蛇の毒を遠ざけるように、家に帰ってから符を門に貼った」。
ここで蘇州人が用いるのは蛇をもって蛇を制すという方法である。天空の蛇王が実際の小蛇を管理するというわけである。
漳州人は蛇に咬まれたとき、蛇王の霊性を求めて治療をおこなう。都の人は蛇に咬まれると、廟に行って痛みを止めてくれるよう訴える。そしてすぐに蛇を探し出せば、路傍で捕えて叩き切る。あるいは廟のなかでその脳をつぶす。これによって「蛇王が罪を治した」とみなされる。漳州人が理解しがたいのは、山林や野で咬まれた人が蛇王に告訴したとしても、何ら効果がないことである。
蘇州蛇王廟で参拝する者に辟蛇符を分け与えるのは道士である。端午節の日、おなじ蘇州の尼姑会で五色の切紙細工で作ったカエル、トカゲ、蜘蛛、蛇、蚿(ヤスデ)が施主に分け与えられる。
これら切紙細工は五毒符と称される。人々はそれを門や横木、寝台に貼り、毒虫を厭勝によって(法術や呪詛によって)制圧した。
山東一帯では、谷雨節のとき別の五毒符を書く習慣がある。「蠍子(さそり)、蜈蚣(むかで)、虺蛇(まむし)、蜂、水中に棲む妖怪である蜮(よう)である。それぞれの画に一針刺し、印刷した符を各家に配り、虫毒を祓う。
祝由術が好きだった清代末期の文人は「治蛇纏呪」(蛇のまとわりつきを治す呪術)に言及している。彼らが言うには、「蛇纏」は蛇に咬まれることを指すのではなく、人の影が蛇の襲撃を受けたことを指すという。症状は、腰に赤い腫物ができて、痛みが堪えがたく、なかなか治らないどころか、生命の危険さえあるという。当時はこの病を纏身竜(てんしんりゅう)と呼んだ。
治療法というのは、右手に稲茎を持ち、腰の周囲に巻く。そして患っているところに向かって呪文を七回唱える。
天蛇蛇、地蛇蛇、螣青地扁烏稍蛇、三十六蛇、七十二蛇、蛇出蛇進。(天の蛇よ、地の蛇よ。青い扁平の螣、空飛ぶ蛇、烏稍蛇、カサントウよ。三十六蛇、七十二蛇よ)
太上老君急急如律令!(太上老君、急いで律令のごとくおこなえ)
[螣(とう)は伝説上の空飛ぶ蛇]
呪文を唱え終わると、稲の茎を門の上に置く。刀で七つの部分に分かれるよう切って、火をつけて燃やす。