第3章 14 イナゴよけ呪術
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螟蝗(めいこう)[稲につくズイムシやイナゴなど害虫]を駆除する呪術は原始農業の発展と虫害の概念の出現とともに進化してきた。その歴史と滅虫方法の発展も悠久の過程を経ている。
『周礼』「秋官」に言う、周王朝には除虫専門の官員がいると。たとえば庶氏は毒虫の消滅を担当する。翦(せん)氏は蠹(と)虫の消滅を専門とする。赤発氏は墙屋の虫の駆除を請け負う。蝈(かく)氏は蛙黾(わぼう)を除く。壺涿(こたく)氏は水虫(水中の毒虫)を取り除く。
これらの除虫官員は虫を滅すのに自然の手段を使うと同時に、特別な巫術(呪術)である呪詛の方法を用いる。たとえば庶氏は「毒蠱(どくこ)の除去を掌り、攻説して(太鼓を叩き、声を浴びせて)これを襘(除去)した。また嘉草でこれを攻めた」。翦(せん)氏は「蠹物(とぶつ)の除去を掌った。また禜(えい)でこれを攻める。莽草でこれを燻す」。みなこれらは「攻」「説」など薬物を配合し、除虫する呪詛法である。
周王朝の専門家である庶氏、翦氏らの除虫官員の描写は信用できないが、『周礼』が示した除虫巫術は虚構とは思えない。西周以前には広く(巫術が)行われていたのではなかろうか。