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一般人がイナゴの害に対して無力なとき、道士や和尚が術士として特殊才能を発揮するまたとない機会となる。道教経典『太上元始天尊説消殄虫蝗経』は、虫蝗に対する専門の経文である。作者は元始天尊の口吻で説く。
「天下の人民は毎年収穫期のとき、敬い、信じる気持ちがなく、三光(日月星)に感謝せず、米や穀物を蔑視し、ニワトリや犬に踏まれるままにし、糞や汚濊とともに捨て、間違った利用をし、大事に扱うともない」
こうしたことが虫蝗水旱の災難(イナゴなどの虫害や洪水、干ばつの災害)を招くのである。元始天尊は下民を守るために「五帝大魔、三元官属、六甲神将、五岳四涜、風伯雨師、雷公電母、二十四炁(気)神君、洞府名山、八大竜王、五穀精霊、一切竜神を派遣し、下界で虫蝗を制圧し、風調雨順(穏やかな天候)をもたらした。
同時に要求した。
「天下万民は善を悪に改めた。宮観(道観)霊壇の仙靖洞府(神仙が住む場所)の中に道場を建立し、真像を按排し、一日二日ないしは七日、心を整え、清潔を保ち、各名香を焚き、行道(自分の考えを実践すること)し、経文を唱えた。斎醮(神に向かって祈祷すること)祭を設け、乾象(天象)星宿(日月五星)尊神(道教神祇)を報告し、大福利をなし、虫蝗を徹底的に消滅させた。雨順風調(天候はよく)で、五穀はよく実り、倉庫は収穫物で満ち溢れている。人民は喜び、国土は太平で、衣食は足りる……」
こうした経文は実質上、滅蝗呪文である。この箇所だけやや幅があり、内容はさらに複雑であるが。