(3)辟虎狼(つづき)

 第三、符を用いる。「玉神符」「八威五勝符」「李耳太平符」「西岳公禁山符」「入山辟虎狼符」「入山佩帯符」「「老君入山符」などどれも辟除虎狼として用いられる符(おふだ)である。最初の四つの符は残念ながら伝わっていない。「入山辟虎狼符」は仙人陳安世によって伝えられたもので、符文はつぎの通り(省略)。

 二枚の符は絹の上に朱書きされたもの。どれも四枚が準備され、身につけるか、住んでいるところに貼りつける。引っ越すときは符をはがす。なぜなら神符は外部の人に見られてはならないからである。

「入山佩帯符」には三符(符文略)ある。それらは牛馬小屋の前後左右に、また豚小屋上部に貼られ、虎狼を避ける。

「老君入山符」の符文には何種類かあり、多くは山中のすべての精怪悪鬼を駆除する。葛洪の意味するところを推し量るに、その中の五枚の符は虎狼専用である(符文略)。どう使用するかといえば、「甲寅の日、白い絹の上に朱書きした符を夜、机の中に置き、北斗に向かって祭り、酒と肉を少しばかり捧げ、自分の姓名を名乗り、ふたたび拝して(符を)受け取ると、それを衣服の内側に入れる」「屋内の梁の柱の上にこれ(符)を捧げる」。もちろん山の中に長くいたあと、ふたたび山中に入るとき、この符を持っていれば、身を守ることができる。


孫思邈(そんしばく)『千金翼方』巻三十「禁経下」には「禁悪獣虎狼」専用の箇所があり、禁虎法についてたびたび簡潔に触れられている。そのなかでも比較的簡単ですばやい方法というのは、つぎのとおり。

荒野や山林の中を進んでいるとき、虎狼など「悪虫」と遭遇したら、右目を閉じ、「左目を三度ぐるぐる回す」。つまり左目で悪虫を三周見回す、あるいは左眼球を三回転する。これによって悪虫と鬼神は完全に制圧される。


明人陳継儒が書いた『虎薈』は、虎に関する物語や珍しい話を収録している。この書の巻三にいう、「ある神巫(巫師)が神壇を作り、虎を呼んだ。罪の疑いのある人は神壇に登らされた。罪があれば(虎に咬まれて)傷を負い、なければなにもなかった。これを虎巫と呼んだ」。

また上官(じょうかんちょう)という名(上官は姓)の人がいた。彼は神術を有し、虎を捕まえることができた。あるとき一人で山に入り、髪を解いて虎と対峙し、衣の袖で虎の頭を払うと、虎は腹ばいになり、動かなくなった。上官昶は虎にまたがって京城に入っていった。

彼が城門に到ったとき、誰かが「上官先生が虎に乗ってやってきたぞ!」と叫んだ。すると虎が目覚め、頭を回して上官昶の脚をがぶりと咬んだ。群衆の助けを借りてなんとか虎を殺すことができたという。古代の術士が催眠術を用いて猛虎を従順にさせた可能性は大いにあるだろう。しかしこういう手(催眠術)を使ったのだとしても、術士が「制虎神術」を用いたと嘘をついたと非難することはできないだろう。