(6)辟蚊蝿
宋代の人は辟蛇蝿法術を伝授していて、五月五日に実施した。「五月五日に風煙の二文字を書き、窓の下の壁に貼った。これで蜒蝣蚊蚋(えんゆうぶんずい)を避けることができる。[蜒蝣はカゲロウを指すが、ここではナメクジやゲジゲジのことを言っているようである。蚋はブヨのこと]
「滑」の字を貼れば効果があると主張する人もいる。また、端五日(五月五日)にたくさん白の字を書き、さかさまにして柱に貼れば、四方向で蝿を避けることができるとも謂われる。
別の法術では、五月五日の正午に太陽をじかに見て、太陽の気を吸いながら、呪文を唱える。
天上金鶏吃蚊子(てんじょうきんけいきつぶんし)!
唱え終わると、凝神運気し(神経を集中し)、ロウソクの芯に向かってつづけて七回吹く。夜になって、灯心に火を着けると、蚊の類はいなくなっている。
『物類相感志』(蘇軾撰)は書く。日食のとき、紙を撚って縄を作る。そのとき外から内へ撚る。月食のときは、内から外へ撚って、縄を作る。それぞれの紙縄は五丈以上の長さがある。二本の縄を合わせて一本にし、日食の縄を左股、月蝕の縄を右股とする。この紙縄を寝台の周囲に渡すと、蚊は入ってこない。
すでに述べたように、秦代以前には救日の弓矢と救月の弓矢によって妖物を射撃する法術があった。これ(怪異の声がする方向に向かって矢を放つ)も弓矢の力を利用したものである。宋人が言う辟蚊法術もまた、日食月食のとき作った辟蚊霊物を使う。紙縄が純粋な陰、純粋な陽の気を吸い取ると考えられたのである。両者はよく似ているが、依拠する原理はじつは異なっていた。