第4章 05 偶像祝詛術(下) 呪術のバリエーションと解き方 

(1)

 ここでは偶像祝詛術の二種のバリエーションと古人の祝詛術の解き方について検証したい。二種のバリエーションとは、偶像への採生魂入の法術(呪術)と樟柳神を用いた吉凶予測の法術のことである。両者とも偶像が使用される。ただし偶像の性質と使用方式は典型的な偶像祝詛術とは異なっている。

 南朝陳の後主(陳叔宝)の弟陳叔堅はひとたび朝廷を倒しかけたが、後主は叔堅の実権を奪い返そうとした。「叔堅は動揺し、怨恨を抱いていた。左道の厭魅でもって福助を求め、木を刻んで偶人をつくり、道士の衣を着せて、祭壇をもうけ、跪拝をよくし、昼夜日月のもとで(儀礼)をおこない、祝詛(呪詛)を施した」。すなわち陳叔堅は木偶に道服を着せ、その前で跪拝しながら儀礼をおこなった。この木偶は陳後主に似ていたが、その代わりとなるものではなかった。これは偶像を使用した比較的早期の事例である。



⇒  つぎ(2)へ