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兪樾『右台仙館筆記』によると、工匠は意図せず血液を梁の上に滴らせてしまい、それによって居住者が病気になってしまったという。この件は、強烈な巫術意識を反映しているといえよう。それはまた工匠が無意識に呪術をかけて、関連したものを作って危害をもたらしてしまったことを意味する。
通常でない建造方式によって主人に災禍をもたらすのも工匠魘魅術の一種である。この法術は昔から建築の禁忌と言われていた。材料の使い方によって吉、凶が出るのである。また棟上げの仕方によって吉、凶が出た。これらはもとより迷信・禁忌の類である。人を害することを図った工匠は禁忌を犯したことになる。もっぱら凶を起こすのは、新しい巫術といってもいいだろう。
宋人孔平仲『孔氏談苑』巻一に言う。船首が船体より高いと望路と呼ばれ、凶をもたらす。
船底は六板、八板など偶数が吉とされ、五板、七板など奇数は凶とされる。
家を建てるとき、主人は工匠(職人)のことを気にしない。そのため工匠は呪法によって人に魘(夢魔)をもたらす。
丸太は通常上が細く、下が太いが、木匠(大工)は下を細く削ってさかさにする。こうして凶がもたらされる。高濂は言う。家を建てるときもっとも忌み嫌われるのは、木工がさかさにして木柱を使った場合である。
サイカチの木を用いて閂(かんぬき)を作るときも、凶をもたらすことができる。高濂は言う。家を建てるときもっとも忌み嫌われるのは、木工(大工)が木柱をさかさまに用いることだ、と。
植物はかならず生気を吸収するもの。根は下へ向かうもの。魘の呪術をおこなう者はこれをさかさにする。家族はもはや、進歩することも向上することもなくなる。やることなすこと逆になる。
工匠は言う。棟上げのとき、前梁を後梁に合うように調整しながら呪文を唱える。「前梁調後梁、かならずまず母が死ぬ」。
工匠は卯孔に竹楔(くさび)を入れながら、呪文を唱える。「栒(バラ科の木)卯放竹、不動自哭」(卯孔に竹を入れると、動けず泣くばかり)。
ある人は言う。床に竹釘を十字に打つ。あるいは人形(ひとがた)を描く。紙符を中に入れる。臥せている人は病気が不安になる。
泥瓦職人はかまどを作るとき、泥瓦の刀で寝室や食堂に切りつける。この家は「刀兵相殺」の状態になる。
この類の法術にはあきらかに禁忌に対する反発が見られる。