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刺猬(ハリネズミ)>

 孫思が述べるようにハリネズミの皮の灰は蠱病の治療に用いることができる。ハリネズミが蠱を制するという観念は相当古くからあった。宋代の人は、ハリネズミは金蚕蠱の天敵と考えていた。蔡條は郁林州長官から聞いた話を紹介している。福建路の福清県のある人が金蚕蠱を飼っているとして某家を訴えた。官吏が捜査に行ったが、証拠を見つけることができなかった。そこである人が策を献じた。「二匹のハリネズミを投入してください。かならず捕えてくれるでしょう」。実際その策を実行すると、ハリネズミは寝床の下から金蚕を見つけた。当時の人は「金蚕はハリネズミを恐れる。ハリネズミが家に入ると、金蚕は動こうとしない」と考えた。抵抗されることはなく、すぐ捕まえることができた。この奇妙な方法をのちの学者は珍しく尊いものとみなした。

 知恵を使った伝統的な厭勝法の中に「ハリネズミ金蚕蠱を制す」という項目があり、李時珍は「ハリネズミ金蚕蠱を制す」伝説について詳しく記録し、金蚕蠱を治療する薬の中でハリネズミの皮がもっとも効力があると述べている。


玳瑁(タイマイ)> 

 タイマイは海中の生き物で、形は亀に似ている[ウミガメの仲間]。生きたタイマイからはぎとった甲羅には解毒と辟邪の効能があるという。劉(じゅん)『嶺表異録』に言う、ある人が左腕にタイマイの甲羅をつけていて、それで毒を避けることができた。ある人は言う、「飲食のなかに蠱毒があるなら、タイマイの甲羅が自ら揺れ動く」。宋仁宗のときの政府(朝廷)が頒布した医学書『図経本草』に言う、タイマイの甲羅を「すって作った汁を飲めば蠱の解毒ができる。生きたまま身に着ければ、蟲毒を逃れることができる」。タイマイの甲羅を生きたまま身に着ければ、それは巫術である。


<糞汁> 

 晋人張華は「婦人の月水(月経)および糞汁を飲む」、そうすれば交州夷人の矢毒を解くことができる」と主張する。蠱疾と中毒は似ていて、医術家は蠱毒の解毒用につねに糞汁を用いるという。『千金方』に言う、蟲毒に当たったら、「人の大便を少量七個、こんがりと火の色になるまで焼き、水の中で溶かしてそれを飲めば、癒える」。また強調して言う、「この治療法を軽く見てはいけない。きわめて神秘的に効果がある」。『述異記』に言う、中蠱者(蠱を病んだ者)は「自らを糞壺に投げ入れるだけでよい。ゆっくりと毒は解けていく」。糞汁治蠱法は古代の汚物駆邪術の一種である。


<蠱でもって蠱を治す> 

 陳蔵器『本草拾遺』に「蠱でもって蠱を治す」についての詳しい論述がある。二つのレベルのことが相互に関連しているとそこでは述べている。

 第一に、捕えた蠱虫をさらして干し、薬となったものを中蠱者(蠱の患者)に服用させる方法。陳氏は言う。「古人は愚かで、蠱をたっぷり作ろうと考え、百虫を甕野中に入れ、何年もたってから開ける。するとかならず一匹の虫が他の虫を食べつくして生き残っている。これを蠱と名付ける。鬼神のように姿を消すことができ、人に禍をもたらし、最後には虫鬼になる。人を噛み、その人が死ぬと、体の穴という穴から(蠱が)出てくる。しばらく待ってからこれらを太陽のもとにさらして干す。蠱を持つ人はこれを焼いて灰にし、服用する。するとたちまち癒えるという。またこの類の蠱は互いをねじ伏せようとする」。

 第二に、薬を作るのに用いようとする蠱は、患者体内の蠱虫を制圧するに足る強力なものである必要がある。陳氏は言う、蠱疾を治療するのに用いる蠱虫は、人を害した蠱とおなじ種類でなくてはならない。人を害する蠱虫の名称を知っていれば、それを根拠にして、蠱には蠱の原理で、対症の薬を処方することができる。蛇蠱の治療に蜈蚣(ムカデ)蠱虫を、蜈蚣蠱の治療に蛤蟆蠱虫を、蛤蟆蠱の治療に蛇蠱の虫を用いるようなものである。蠱虫が「相伏」(互いに伏せようとする)の原理を用いた薬であり、蠱疾はすべてこれで治るはずである。陳蔵器は「鬼神のように姿を消す」毒蠱をどのように入手するか説明していない。蠱病の治療法はいわゆる「毒を持って毒を制す」であり、推論から出たもので、実際的な方法とはいえない。のみならず、陳氏の推論から考えるに、蠱を飼うことに先んじて、かならず「蠱でもって蠱を治す」という結論を引き出さなければならない。