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 時代の発展にしたがって、道家の隠身術の研鑽は日増しにきめ細かくなっていった。『雲笈七籤』巻五十三所収「太上丹道精隠地八術」に八種の隠形方法が記されている。具体的には蔵形匿影、乗虚御空、隠淪飛宵、出有入無、飛霊八方、解形遁変、回辰転玄、隠景儛天である。これはセットで成り立っている法術だ。この書の作者いわく、隠地八術はもともと清境秘法で、「太上玉晨高聖君」によって「九玄」から学び、七千年が過ぎて太極真人ら神仙に伝えられた。授法のときは誓いが立てられた。「口口相授、不得妄伝、子不示父、臣不奉君」(口から口へ伝授する。妄りに伝えることは許されず、子が父に示すことはなく、臣下が主君に奉ることもない)と。この八種隠身術はパターン化されたものなので、ここでは二つを例示するにとどめたい。


<蔵形匿景>

 立春[2月4日前後]の日の平旦[太陽が地平線上にある頃]時分、室内の東北角に座り、紫雲が東北角艮宮の位置から降下し、家全体を包み込み、内も外も一面真っ暗になったと想像しよう。 しばらくたって今度は紫雲が麒麟のような九色の獣に変成し、目の前で揺れ動いていると想像してみよう。つぎに三十六回叩歯[伝統的な養生法。歯を合わせてカチカチと鳴らす]をして、小声で呪文を唱える。「回元変影、晩暉幽蘭、覆我紫墻、蔵我金城、与気混合、莫顕我形(もとの姿を保ったまま形を変えよ。ランのごとき夕暮れの光を照らし、わが紫の壁を覆え。わが黄金の城を隠せ。気と混じりあい、わが姿があらわになることがないようにせよ)」。

 呪文を念じ終えると、九度気を飲み、目を見開き、雲気を消除する。最後に「霊飛玉符」を服用する。一年修練すれば体を隠すことができるようになる。

 いったん危難に遭遇したなら、艮宮の位置に立ち、「本命上土」を取り(生年の干支の土を取る。たとえば子年に生まれた者は北方の子の位置の土を、寅年に生まれた者は東方寅位の土を取る)、自ら遮り、自ら覆う。ふたたび立春に修練し、そのような想像をして、呪祷する。すなわち雲気で人体を覆い隠す。そうすれば人に発見されることはない[つまり透明人間になる!]。


<乗虚御空>

 春分の日、正午頃、部屋の中に入り、東の方を向く。目を閉じて濃厚な青色の雲気が飛輪のように東方震宮の位置から降下して家の中に充満し、家の内外が一面真っ暗になるさまを想像する。しばらくして、青気が変化して二匹の蒼竜となるさまを想像する。そのうちの一匹がわが左耳にあり、わが体にまとわりつく。ついで叩歯すること36回。小声で神明に祈る。「騰玄御気、輪転八宮、坐則同人、起則入室、覆我碧宵、衛我神竜、映顕我形、通霊洞冥、呑咽九霊、永得無窮」。

呪文を念じ終えたら、九度気を吸い、目を見開き、霊符を服用する。二年修練すれば、「乗虚駕空」(虚空を駆ける)が可能になる。危難に遭遇すれば震宮に立ち、干支の年の位置の土を取って自ら遮る。そして春分に修練し、想像をし、神明に祈る。すると「大気のように見える」驚くべき効果が得られるだろう。