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 『酉陽雑俎』「怪術」に引用する『雑五行書』に言う。「亭部(見張り番)が土をかまどに塗れば、水、火、盗賊を防ぐことができる」。また『三農紀』巻二十一に言う。「社壇の土を宰官自らが取って城門に塗ると、盗賊は境界を越えて侵入することができない。人家は門戸に(土を)塗り込めば、盗難は起こらない」。後者はあきらかに前者から抜き取って書いたものだ。「亭部」と「宰官」はどちらも盗賊を取り締まる担当の官員である。盗賊は官員を怖がるので、「亭部土」が厭盗の神力を持つのである。(この種の法術は鼠を制するのにも用いられる。第3章15節参照)

 民間が伝える辟盗法術にはほかに撒鵲巣灰(カササギの巣を焼いて灰にしたものを撒く)と癸丑造門(癸、丑の日に家を訪ねる)などがある。『俚俗集』巻三十九「焼鵲巣」の乗に「元日、カササギの巣を取り、焼いて灰にして内側に撒く、すなわち盗難を避けることができる」。同書の巻四十一に「癸丑造門」の条があり、『墨子秘録』を引用して言う。「蠟月癸丑日造門、盗人は入ることができず」。この二つの方法はどちらも、どういう原理に依拠しているのかはっきりしない。

 古代術士は呪文で盗賊を制することを好んだ。息夫躬が用いた祝盗方が呪文を含んでいたのは間違いないが、実際にどういうものだったかは、記載されていないためわからない。

 『千金翼方』巻三十の「禁賊盗」という節には、二つの呪法が書かれている。そのうちの一つは、遠行を準備し、まず地面に「壇」を描く。すなわち家の庭に六尺平方の壇を、野外に縦横六十歩の壇を描く。壇内に十二辰位を設置し、当人は甲地(東)に立ち、姓名を呼びながら言う。「某よ、某へ行きたいだろう、討伐するとき、神よ、我を守り給え。吉昌(すこやかで、つつがなし)なり」。三度「乾」という字を唱え、大きな声で「青竜下!」[青竜は竜族でなく四霊の一つで東方を守護する神明]と叫んだあと、呪文を唱える。

「六甲九章、天円地方。四時五行、青赤白黃。太一為師、日月為光。禹前開道、□尤辟兵。青竜侠挙、白虎承衡。熒惑先引(けいわくせんいん)、辟除不祥。北斗誅罰、除凶去殃。五神導我、周遊八方。当我者死、向我者亡。欲悪我者、先受其殃。吾受北斗之孫、今日出行、乗青竜、出天門、入地戸、遊陰中、履華蓋、去寇賊。矛盾刀、戟戟弩、見我嶊伏、莫取当御。急急如律令!」。

 この呪文から察するに、「寇賊」を主な対象とする厭勝の方法である。財物を盗む「盗」と人身に傷害を与える「賊」はしばしば関係があり、賊を禁ずる呪法は、盗を禁ずる呪法を妨げるものではない。

 清代、「山東の李鼎和は賊盗を防ぐ呪文を得て、羈旅路宿をしても、(賊盗の害を)予防することができた」。姚伯昂、梁章鉅らはまさにこの呪文を妙法とみなし、選りすぐって記した。この種の呪文には、「七七四十九、盗賊満処走、伽藍把住門、処処不着手。童七童七奈若何!」、さらに呪いをかけて要求する、「清晨日の出のとき、東方に向かって四十九遍黙念せよ。鶏、犬、婦人にこれを見せてはいけない」。