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古代道士は盗賊を厭鎮するために鎮宅符籙を常用していた。窃盗をおこなう者はかならず部屋に入る。もし部屋に魔力をかけていれば、盗人が入ろうとしても、逆に後退してしまう。すなわち芽生えかけていた盗難の禍は消えることを意味する。
『太上秘法鎮宅霊符』には厭盗四符が記されている。第一符は「盗賊不侵万事称意」の符、第二符は「厭盗賊驚恐人」。盗賊を厭鎮する符のほか、二つの符がある。すなわち第三符は「厭盗賊口舌無端之鬼」、第四符は「厭疾病盗賊虚耗之鬼」。
厭盗法術と相関関係にあるのが捕亡法術である。『日書』「盗者」はある観点から犯罪者を捕獲する方法について述べている。漢代の術士は、逃亡者の衣服から帯を抜き、その裏に磁石を付けて、井戸の中や居室に吊るした。すなわち逃亡者を吸い寄せるためである。「磁石を井戸に吊るすと、逃亡した人は自ら戻ってくる。逃亡人の帯を取ってその裏に磁石を付けて井戸の中に吊るせば、逃げた人は帰ってくる」「逃亡した人の帯を取ってその裏に磁石を付け、室内に吊るすと、その人が戻ってくる」(『太平御覧』に引用される『淮南万華術』より)。
逃亡者を磁石で呼び戻すことができるというのは、磁石の魔力の迷信である。逃亡者の衣服の内側に磁石を置くのはまさに典型的な接触巫術である。のちの招亡法の中には磁石を即座に取り消すというのがある。「逃げた人の衣服を取って、井戸の中に垂らせば(犯人は)自ら戻る」。この揮衣法、懸衣法などは、どれも伝統的な招魂礼の影響を受けている。さらには「甑帯麻(そうたいま)で奴婢の衣の背中一尺六寸ほどを縫う。すると逃走しようという気持ちはなくなる」。
甑帯麻は甑(こしき)を運ぶためにくくりつけられた麻縄のことである。この甑帯麻にはくくりつける意味があり、おのように奴婢の魂をくくりつけることを表している。これは逃亡を防止する方法である。
一部の術士は、逃亡者の姓名をさかさに書いたり、官印をさかさに押したりするのが手っ取り早い逃亡者の捕獲法と信じている。「逃げた奴隷を捕まえるために奴隷の姓名をさかさに書く。あるいは逃げた囚人を捕まえるために印をさかさに押す。そうすれば簡単に捕まえることができる」。逃亡者の姓名をさかさに書いて書付に貼る。あるいは姓名を想念し、逃亡者の霊魂に影響を与え、転倒させ、混乱を与え、遠くへ逃げないようにする。逃亡犯を累積する公文上の官印をさかさに押す。それは官府に神威があるかのように見せるためである。