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 古代の術士は女性が人に言えないことを言わせる方法について考えていた。『淮南万畢竟』は言及する、「竹虫人を飲む。自らその誠を言う」方法に言及している。つまりそれをまとめると「竹虫三匹、竹黄(きのこ)十個を配合する。人の情(こころ)が欲しければ、大豆のような薬(草)を取り、焼いて酒の中に入れれば、飲んでも酔うことはなく、問えば、かならずそれを得ることができる」。

 この法術は女性専用ではないが、術士は不義の心を引き出すのにこれを用いた。これ以外にも女性専用の法術はあった。『如意方』に言う、「白馬の足元の土を婦人の寝床、床下に人に知られず置く。すると婦人は自ら浮気の相手の名を口にする」。

 『延齢経』に記される、「療奴(女奴隷)が情事を持ったとき、自ら白状させることができる」。「阿胶(ロバなどの獣皮から作られた中薬)や大黄を磨って粉にしたものを女の衣服にまく。すると女は自らしゃべりだす」。

 術士は女性が淫行をおこなっているかどうかの検証法を持っていた。しかしこの法術によって女性の淫らな心を根絶できるとも信じていた。『如意方』は三種類の法術に言及している。

 一つは、雄鶏の後ろ爪を用いる法。「三歳の白雄鶏の両脚の距(けづめ)を焼く。女性にこれを飲ませると、淫行はやむ。

二つは、牡荊(ぼけい)を用いる法。「牡荊の実を取り、女がこれを飲む。すなわちひたむきに愛するなり」。この処方は「淫婦をひたむきにさせる処方」という。

三つは、霊符を用いる法。陽符、これに朱書きし、心に入る。陰符、淫情を絶えんと欲し、腎に入る。これに朱書きし、服用する(あるいは身につける)といい。竹の中の白淫(薄膜)を丹(朱砂)によって赤くしたものに、空青(中薬)で書いた二つの符を飲めば、淫は絶えてなくなる。

雄鶏、牡荊はどちらも巫術の霊物であり、雄性の神力を含んだ霊物とみなされる。この淫を治す法術と守宮法術には原理的に相通じるものがある。上述の説明文を読むに、陽符は治心(心臓を治す)に、陰符は治腎(腎臓を治す)に用いられることがわかる。治心は思いを絶ち、治腎は性欲を抑制する意味合いがある。

陽符、陰符とも通常は飲み込む。ただし陰符は身につけることがある。符をつくる者からすると、陰陽の二字(二符)の加減で、陰陽の具合が決まることになる。八つの目で[神のような目で]高みから観察すると、浮気者の心に恐れが生じ、勝手気ままな考えは自然と消滅することになる。

 文化が比較的遅れている地域には原始的な観念が流行している。そういった地域の淫乱防止の法術のなかに原始巫術の痕跡が見られる。袁枚は言う、「広西柳州に牛卑山がある。形は女陰に似ているので粤(えつ)人は陰を卑とし、牛卑山と名づけた。毎年大晦日になると、男女十人が新年の夜明けまでそれを守った。警備をなおざりにすると、竹や木の先でもてあそばれ、抵抗できなかった。するとその年、町の婦女はみな淫乱になった。ある町の官吏はこれを憎み、それ[山の陰部]を土で塞いだ。すると女たちは小便がうまくできなくなり、前後で漏らすようになり、傷害を負う者もあった。

 山の形が人の形(陰部)と似ていることから、山と人は感応しあい、人の行為を防ぐには山を防ぐと考えた。典型的な万物交感の観念である。この巫術と、『金枝篇』に紹介されている性行為で豊作を促進する巫術と、同工異曲である。