(4)
漢墓から出土した『胎産方』が列挙する多くの求子法の大部分は巫術である。この書の中で示しているのは、「多男無女」(男の子が多く、女の子がいない)の場合、女の子が生まれるには、胞衣(えな)を、影になっている庭園の壁の下に埋めなければならない。これとは逆に、日なたになっている庭園の壁の下に胞衣を埋めると、男の子が生まれる。
もう一つの方法は、甗衣(えんい)、すなわち古代の炊事道具である甗(こしきがま)をくくりつける紐(ひも)で胞衣を縛り、壁の下に埋めれば、男の子が生まれるというもの。
胞衣を埋めて子を生む法は、つぎのようなロジックに従っている。まず胞衣に陽気(陽のエネルギー)あるいは陰気(陰のエネルギー)の影響を受けとらせる。そしてこのエネルギーを胞衣によって、胞衣と感応関係をもつ女性に渡される。これによって胎児の性別をコントロールできるようになる。
『胎産書』に言う、「求子の道いわく、九宗の草を求め、夫婦ともに酒でこれを飲む」。九宗とはすなわち九族。本人の一代のほか上輩四代、下輩四代。あるいは父族四、母族三、妻族二。九宗の草を集めて大家族の意志と力量とする。子が生まれるのを妨げようとする邪祟はかならず破壊される。
『医心方』巻二十三に治逆産方(逆子を治す医方)が引用されている。「三家の飯を赤子の手に置く。すると順(産)になる」「三家の塩を取って煮詰め、手足に塗るとただちに出る」「三家の水を取り、それを服する、あるいは手を洗うと、順に生まれる」。この医方と九宗の草で無子を治す法術とは基本的に同一の巫術観念である。