第4章 18 富を得て、願いをかなえる呪術
原始社会の形成において古い法術(呪術)を比較すると、致冨術(富を得る法術)はもっとも遅く登場した巫術の一種といえる。春秋時代以前、個人の富を得たいという欲望は宗族組織と原始的財産分配方式による歯止めがかかり、十分に発展することがなかった。
戦国時代以降、宗族体系が崩壊し、商品経済が空前の活況を呈し、幽霊のごとく社会生活のあらゆるところに姿を現した。貪欲に利潤を追い、富を得たいという欲望が増して、餓鬼のように下腹を膨らますことになった。
これと同時にたまたま金持ちになったり、運よく金持ちになったりする一方で、わけもなく一晩で成金になったりするケースもあった。また普通のやりかたで富を追及する信念を失い、努力なしで一攫千金を夢見たり、超自然的な手段で富を得ようとしたりする輩もいた。これは致冨(富を得る)の渇望が自己コントロールへと変貌する過程であるといえるだろう。このような強烈な富を得たいという欲望が現れたとき、致冨巫術(富を得る巫術)が作られたのである。