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古代によく見られる致冨巫術は交感原理から出発している。主なものは埋霊物(まいれいもつ)、塗霊土(とれいど)、呪符を用いた諸法術などである。
<埋霊物(神秘的な力のあるものを埋める>
埋霊物の法術の中で埋蚕沙(さんしゃ)法術はもっともよく見られる。蚕沙とは、蚕の屎(糞尿)のことである。
『竜魚河図』に言う、まさに蚕沙を住宅の亥の方向、すなわち西北の下に埋める。「大富になる(大金持ちになる)。生糸を得る。吉利(縁起がいい)である」。
甲子の日、一斛(こく)二斗の蚕沙で宅を鎮める(亥の方位に埋める)。「大吉。千万の財を成す」。
『枕中方』に言う、「蚕沙を亥の地に埋めれば、家は大金持ちになる」。蚕沙を埋めるのは、もともと同類相感の原理によって生糸を獲得するためである。生糸は多くの場合、自ら富を得るものである。のちに一般的な意味の致冨術に転化した。前節で述べたように、古代の医師は蚕沙によって、女を男に変じる霊薬を作った。これは蚕沙致冨法術が変化した方術である。
方士は牛角、鹿鼻、鳥、五穀、李木炭(すももの木から作る木炭)を埋めれば富が得られると考えた。
『如意方』に言う。「牛角を宅に埋めれば、冨(を得られる)」「鹿鼻を建物の隅に埋めれば財を成す」「鹿骨を門や厠(の下)に埋めれば、銭を得る」「鳥を庭に埋めれば、富ませることができる」「五穀各二升を堂に埋めれば、銭や財を集めることができる」「李木炭三斤で門の下を掘り、これを埋めると、百倍富ませられる」
牛角を埋めるのは牛が多いからであり、五穀を埋めるのは穀物が多いからであり、鹿鼻、鹿骨を埋めるのは「禄」(給料。鹿と同音)が多いからである。この致冨法術はわかりやすい。しかし鳥を埋める法術、李木炭を埋める法術については理解しがたい。
漢代の術士はすでに黄石鎮宅法を編み出していた。のちの人は六畜繁殖において埋黄石が有利であるという観念を押し広めた。
『如意方』は「黄石六十斤を亥子(い・ね)間の地面、および鶏小屋の下に置く。すると六畜業がうまくいく」と述べる。六畜旺盛で家庭は衣食住に足りる。埋蚕沙、埋黄石の法術はどちらも「亥地」あるいは「亥子の間の地」に霊物を埋めることを強調する。つまり五行学説とも関係する。
亥と刑殺[死刑に処すこと。ただここでは命理学の用語として用いている]の組み合わせによって、北西の方角から殺気がやってきて、蚕と六畜の生長に不利である。それゆえ蚕沙、黄石を亥位に埋めて、殺気を鎮圧する必要がある。この意味を説明すると、蚕沙が蚕の生長に感応して作用するほか、黄石にも邪気を圧伏し、鎮める力がある。
『霊奇方』の記述によれば、ある致冨法術はより典型的な交感巫術である。「他人のいい田んぼが欲しいなら、戊子の日にひそかに買券を作り、田んぼの中央に埋める。田んぼの主はかならず田んぼを売る」。
ひそかに買地券を作り、手に入れたい田んぼの中央それを埋める。その土地の主人はいつのまにかその土地を売っている。買券を作った者は、相手に売らざるを得なくさせて、容赦なく値切り、田んぼを(安く)獲得することができる。