チョギャム・トゥルンパ伝 第1章2
ファブリース・ミダム 宮本神酒男訳
増加する信者
チョギャム・トゥルンパの『行動の瞑想』が1969年にロンドンで出版された当時、西欧には仏教の瞑想の実践に関する本はほとんどなかった。この本はまたたくまに仏教を学びたい人々のための必須のテキストとなった。このなかでチョギャム・トゥルンパは「霊性」(スピリテュアリティ)にかんして驚くべきアプローチを示した。ブッダの道をシンプルに怒りをやわらげるものとして描いたのだ。彼はつぎのように説明している。
「教えに関するかぎり、それはつねに開かれています。それは本当に寛容で、きわめてふつうのことで、とてもシンプルなのです。それ(教え)は特定の人物、覚醒を探した者の性格のなかに含まれているのです。彼はいつも酔っぱらっているかもしれませんし、いつも暴力的かもしれません。しかしその性格は彼の潜在力なのです」
チョギャム・トゥルンパは正確な、客観的な智慧を獲得するための霊的な道を示すことはなかった。しかし社会的な、倫理的な慣習をわきに置き、本当の自我を真正面から見ることができる能力を、霊的な道として示した。