初代トゥルンパ、クンガ・ギェルツェン
初代トゥルンパは輝かしい由緒ある家族に生まれたが、トゥン(トゥルン)・マセのもとで学ぶために家を出た。彼は師のそばにおよそ20年いて、師に仕え、また師の指導のもと学習に励んだ。そして師のもとを離れる時が来た。師は彼に自分の場所を見つけ、他者に教えを説きなさいとアドバイスを贈った。彼は大地主で弟子のひとりであるアド・シェルブムから城を寄進された。しかし同時にトゥルンパ1世は遊牧民の生活も残したいと思った。
そうしている間も、トゥン・マセはかなりの数の弟子を持つようになっていた。彼の葦小屋寺院には入りきれないほどの弟子が集まった。そこでそれまでのドゥツィ・テルよりはるかに大きいナムギェル・ツェと呼ばれる要塞城に移った。これもまたアド・シェルブムからの寄進だった。寄進のなかには広大な土地とともに岩だらけの山も含まれていた。この岩山には洞窟がたくさんあり、瞑想修行をするにはもってこいの場所だった。いびつな形をした小屋が気に入っていたトゥン・マセは、こうして活動がさかんになってきた地域全体をスルマン(たくさんの角)と名づけた。
死ぬ前にトゥン・マセは自分自身が転生することはないだろうと語った。なぜなら彼の教えそのものが彼の転生であり、生き写しであるからだというのだ。彼が逝去する時点では、スルマンにナムギェル・ツェ、ドゥツィ・テル、そしていくつかの小さな寺院が含まれ、それぞれに精神的な長がいた。