11章 

 鉄・馬の年の五月十五日、ケサルの前に女神マネネが現れた。ケサルはすでに10年関、密室修行(ツァムス)生活を送っていた。

「ケサルよ。おまえは調伏すべき悪魔をすべて殺したわけではないぞ。南の国王、シンティはますます繁栄を謳歌しておる。その地位を確固としたものにしつつある。もし今年、シンティ王を討伐しなければ、二度と討伐することはできないだろう」

「どうやって南の国まで遠征できるでしょうか。私は13年間、密室での隠棲生活をすることにしたのです。まだ10年しかたっていません。戒を破ると災いがもたらされるといいます。使命を成し遂げないというわけではありません。修行の期間が終わればすぐにシンティへ遠征する心積もりです」

「いえ、そのときでは遅いのです」

「何をすればいいのですか。私は約束を守って数多くの敵を倒し、それらの魂を至福の休息所に送りました。この仕事を失敗することはできないのです」

 マネネは困惑した。それゆえ彼女は天界の梵天(ツァンパ、ブラフマー)のところに相談に行った。梵天は、この案件は重要だと考え、白い獅子に乗って マネネとともにケサルのもとに戻り、翻意を促した。

 英雄ケサルは確信が持てなかった。彼の約束された転生が破棄され、苦悩の世界(現世)で、低級の存在として輪廻をすることになるのではないかと恐れたのだ。ツァンパは災難によってこの輪廻から脱落することはない、なぜならケサルは天界の性質を持っているからであると請け合った。ケサルは要請に応じてすぐに南方の王と戦うため遠征に出発することを約束した。

 神々が消えると、英雄ケサルは妻を呼んだ。王妃はひどく驚いた。王妃は10年間、夫を見ていなかったが、修行の期間中であることをよく知っていたのだ。

「どうしたんですか、ケサルさま。ご病気ですか、それとも食べ物が足りないのですか? おなかが減っているのですか?

 もしご病気なら、医者をすぐに呼びましょう。もし食べ物が必要なら、干し肉とお茶を持ってこさせましょう。けれど、密室修行の中断はやめてください。やめれば、邪悪さが入ってくるでしょう」

 ケサルはマネネとツァンパ(梵天)から受け取った命令について話した。彼は神からの命令に従わないわけにはいかない、と言った。

 セチャン・ドゥクモは泣きながら、密室修行(ツァムス)をやめてしまうのは悪くて危険なカルマであると訴えた。英雄ケサルは、しかしながら、聖なる存在に依拠していて、彼らの叡智を信じていたので、これ以上の干渉をしないようにと言った。そして遅れることなく、招集の手紙をリンの有力者たちに送るよう命じた。

 数日後、約100人の有力者が宮殿の大広間で一堂に会した。それぞれの地位に応じて虎皮、豹皮、キツネの皮の絨毯に坐った。彼らはケサルに、修行期間中なのになぜ中断し、南方のシンティ王を攻略しないといけないのか、とたずねた。

 ケサルは彼が受け取った命令について説明した。そして密室修行(ツァムス)の規則は守るべきだが、神々の意思のほうが尊重されるべきであると納得した。

 会議で、30万人のホルの兵の長として、ディクチェンに協力してもらうこと、またジャン国のユラ・トンギュルに厖大な兵とともに参加してもらうようディクチェンから伝えてもらうよう頼んだ。

 友軍の到着を待つ間、リンの戦士たちは彼らの武器、馬、女たちが準備する糧食などを確認した。

 ディクチェンが30万のホルパ兵とともに、またユラ・トンギュルが60人の将軍と50万の兵を率いてやってきた。リンの兵は30万ほどだった。

 膨れ上がった軍隊が、何千もの赤や黄の旗をなびかせ、宮殿のまわりを行進するさまは、踊る炎の海といったふうで、壮観だった。

 5日後、すべての騎兵はケサルの司令のもとに出発した。そしてその夜、彼らはカム南川(Kham lho chu)に到達した。

 川には鉄の鎖の間に厚板をはさんだ橋が渡されていた。その向こうには国境を守護する要塞が橋を見下ろしていた。要塞に住む人々は、彼らの前の平原に膨れ上がった武装した人々の一団を見て、さらに彼らがテントを張るのを見て、肝をつぶした。

「彼らは仲間か? それとも敵か?」 

 総督であるタモトンドゥプ(Tamotongdup)とユムドゥク・ポイェ・ロベ(Yumdug Poye Lobe)は彼ら自身でシンティ王のもとへ出向き、この奇妙なできごとについて知らせ、指示を仰ぐことを決定した。

 彼らが謁見したとき、シンティ王は血がしみた人の皮の上に坐っていた。彼らは毛皮の贈り物をしたあと、いま起きていることについて報告した。

「そいつらがだれであるか、わしはおまえたち以上のことは知らんぞ。さっそく60の州の大臣を読んで聞いてみよう」

 会議が開かれたが、参加者のだれもその外国軍の意図がわからなかった。満場一致でタグカル・オマジク・ゾン(Tagkar Oma Jig dzong)の隠士ラマ、テブサン(Thebsrang)に諮問することが決定した。王はすぐにラマがこもって修行している洞窟に使者を送って助力を求めた。

「もどって王に伝えよ」と手紙を読んだあと、隠士は使者たちに言った。「わしは何も答えを持っておらぬし、わしを宮殿へ運ぶためにおまえたちが持ってきた馬も必要がない。立ち去るがいい!」

 使者たちは困ったことになったと思った。彼らはラマが王の要請を拒んだのかどうかわからなかった。あるいは歩いて宮殿へ行くということなのだろうか。しかし隠士ラマ、テブサンはそんなことを聞けるような相手ではなかった。ラマは彼らを追い払い、使者たちはそこを離れるしかなかった。

 使者たちの姿が見えなくなると、ラマはふたたび洞窟のなかに入り、瞑想用の座布団として使っている熊の毛皮の敷物の上で足を蓮華座に作って座った。そしてしばらくじっと動かなかった。

 しばらくすると、彼の体からぼんやりとしたものがあらわれた。それは分離して、堅固なものになった。いま、テブサンに似たラマがふたりいた。ひとりは動かずに座り、ひとりはその前に立っていた。立っているラマは洞窟の入り口から外に出ると、目が回るような速さでシンティの宮殿に向かって歩き始めた。もうひとりのテブサンは熊の毛皮の上で足を組み、背筋を伸ばし、無表情で、瞑想状態に入った。

 外国軍の到来について聞かされ、ラマ・テブサンはいかにも憂えているように、頭を振った。

「このことはいかなるふうに考えても、よい前兆とはいえないでしょう」とラマは国王に言った。「疑いなく、彼らはわれわれの敵です」

「たしかめる必要があるだろう」と国王は言った。「タモトンドゥプよ、メンチェン・クラよ、彼らのところへ行ってどんな意図を持っているのか、聞き出してきてくれ」

 特命を受けた総督と大臣は、赤と黄の馬に乗り、川沿いの道を下って行った。彼らは外国軍の野営地に着くと、大声を出して異邦人を呼んだ。

 このとき将軍たちはケサルのテントのなかで作戦を練っていた。外から叫び声が聞こえてきたので、彼らのうちのふたりが川まで歩いて行き、そこからシンティ王の家来たちに向って叫び返した。

「もしわれわれと話したいなら、どうぞこちらに来てください!」

 シンティの密使たちは異邦人たちの素性を知らないまま橋を渡るのは気が引けた。しかし招待されたので、彼らは橋を渡り、野営地まで少し距離があるところで止まった。

異邦人側のふたりの男のほうから近づいてきた。ひとりは青い体をしていて、青い馬に乗っていた。もうひとりは赤い体をしていて、赤い馬に乗っていた。ふたりとも小さな旗で飾られた鉄の兜(かぶと)をかぶっていた。

「何を言おうとしているのですか、勇者どもよ」

 南の国の使者たちはこたえた。

「あなたがたはどなたですか、勇者どもよ。こんな大人数で来るとは。あなたがたの首領はだれですか? 

 なぜ許可なく、草地代も払わず、ここに野営するのですか。川沿いに上っても、下ってもかまいません、道を進んで、ここではなく、最善の場所へ行ってください。シンティ国王が許可を出すことはありません。国王を刺激するようなことはやめてください。王の怒りはすさまじいものがあります。あなたがたは木端微塵になってしまうでしょう」

 青い体の男はこたえた。

「おお、南の国の戦士たちよ。私はジャンの国の王統に属するユラ・トンギュルと申します。これはケサルの野営地です。もしわれわれの滞在が長くなるなら、1年になるでしょう。もし短いなら、3か月です。われわれは草地代も水代も払っておりませぬ。シンティ王とお話したいと思っております」

「リンの乞食どもめ!」とメンチェン・クラは叫んだ。「南の国の力強いおかたに何を話すというのか。言ってみろ。おれが伝えてやるから」

 そのあと赤い体をしたディクチェンが赤い馬に乗って前に出てきた。そして懐(アンバグ)から19サンの重さの黄金のパイプを取り出し、1バウの量のタバコを置いた。彼はタバコをパイプにつめて、火を点け、言った。

「もしわれわれが来た理由を知りたいなら、戦士諸君、教えてあげよう。

 リンの宰相トドンには勇猛な20歳の息子がいる。子供のころから毎年、嫁にはだれがふさわしいかモパ(占い師)にモ(占い)をさせてきたが、答えはいつもシンティ王の娘というものであった。もし父親が、つまりあなたがたの王が友好精神でもって同意していただくなら、お返しに金と銀を与えよう。もし断るようなら、よからぬことが国王の身に起こるであろう。われわれは国王の土地を奪い、娘を連れ去って奴隷にしてしまうことだろう」

「この厚かましい連中め!」と総督タモトンドゥプは叫んだ。「国王の娘はまだ15歳の子供だ。王の領地を継いでつぎの王位に就くことになっているのだ。シンティ王がリンのような乞食の国に嫁がせると思うのか?

 もし今おぬしが言ったことをそのまま国王に伝えたら、おぬしらを全員虐殺してしまうだろう。もしそれを望んでおるのなら、そうすればよい。望むとおりになるだろう。どうなるか結果が楽しみだ」

 そしてくるりと旋回して、シンティ王の使者たちは要塞に戻っていった。

 彼らは宮殿に戻り、ケサルの将軍たちとのやりとりを王に報告した。しかしながら、自信たっぷりの軽蔑的な態度はすでに捨て去っていた。むしろ英雄ケサルの怒りを招くようなことはしないこと、トドンの息子に王の娘を嫁がせることに同意することを提議した。

「ケサルは13歳のときに巨人の魔王ルツェンを殺した王です。そのあとホルやジャンといった大国を征服しました。この王を敵に回すのはたいへん危険かと思われます」

 この諫言はシンティ王を激怒させた。そしてふたりの家来に向って言った。

「わしはどんなことがあっても、乞食のような遊牧民の国に娘を嫁がせるようなことはしないぞ。おまえらふたりは見下げた臆病者だ。わが軍を招集するのだ。ケサルの高慢ちきを罰するのに時間はかからぬわ」

 翌日の夜、シンティ王の娘メトク・ラツェ(美しい女神の花)はひどい悪夢を見た。日が昇ると、彼女は父親に夢の話をした。

「夢の中で私たちの国は暗闇のどん底にありました。町には血が川のように流れていました。宮殿のなかでも、高価なトルコ石の柱が壊れていました。大臣クラは生きたまま皮がはがされ、4本の肋骨が地面に突き刺さっていました。私は手に白い虹の端を持ったまま、東へ向かって逃げました。

 お父さま、私のために、あなたや家臣の命が危険にさらされるくらいなら、私をリンへやってください」

 国王はこれ以上聞きたくなかった。彼は娘に口をつぐむように命じた。その年でこの種の問題を理解するのは不可能で、まるで愚者のようだ、と批判した。

 大臣会議でリン軍と戦う決定がなされた。大臣らは即座に宮殿前に軍隊を招集し、斥候兵を送ってケサルの軍の規模を探った。

千人の兵が川を渡る橋を警護していた。

 翌日、それぞれ1万人の兵を率いるふたりの将軍の部隊が、敵がやってくる道をふさいだ。その翌日には、それぞれ3万人の兵を率いる別のふたりの将軍の部隊が増強された。

 ケサルの軍がどの程度の規模か想像もしていなかったシンティ王は、自国の軍の兵力は十分相手の兵力を凌駕していると考えていた。

 南の国の王が戦争の準備を進める間、ケサルは夢を見た。夢の中で、彼は白馬に乗った白衣の人を見た。その人は小さな白い旗の飾りがついた銀色の兜(かぶと)をかぶっていた。その騎士は彼がすぐに川を渡るよう助言した。

 遅れることなくリンの軍隊は進んだ。橋にたどりつくと、そこには数多くの兵士が警護し、その後方にも軍隊が控えているのがわかった。これらの兵士の前に立っていたタモトンドゥプは、瞬時に20人のリンの兵士を殺した。それから後ろを向いて、急いで前進するよう促した。しかしそのとき自身の部隊を率いて橋を渡ってきたのはディクチェンだった。総督タモトンドゥプを追いながら恐ろしい声で叫んだ。

「もしそなたが私を知らないなら、教えてあげよう。私は最強戦士にして神々の子、ホルのディクチェンである。わが強さを、身を持って味わうことになるだろう」

 そう言いながら彼は天から落ちてきた鉄で作った剣のひとかきによって、タモトンドゥプの首を切った。

 ユラ・トンギュルはジャンの兵士とともに、馬の背中に体をつけて川を泳いで渡った。リンの「勇者たち」に加わって、彼らは南の国の兵士たちを大量に虐殺した。敵兵の多くは我先にと城内に逃げ込んだ。

 この大虐殺について知らされたシンティ王は激昂した。彼は将軍クラとトンチュン指揮下の軍に侵略者を撃退するよう命じた。

 戦いは混乱を極めた。各将軍は、称号と功績を掲げてから戦いに挑んだ。戦士たちは弓矢、剣、槍でもって戦う一方で、黒テントの遊牧民たちは鞍の上から投げ縄を投げて敵兵をからめとり、引きずって馬の蹄の下敷きにした。

 このような乱闘のあと、メンチェン・クラとトンチュンのふたりの将軍は捕縛された。勝利者は彼らを生きたままケサルに見せようと考えたのである。彼らはクラの四肢を槍で地上に釘づけした。トンチュンには足枷をした。ケサルは彼らの前に出てくると、クラを指しながら言った。

「この男は正真正銘の悪魔の子であり、首領である。その皮膚が呪術的な力を持っていることは、わが千里眼で識別することができる。それが役に立つ日が来るであろう。その皮膚はとっておくように。

こちらのトンチュンは、神々の子孫である。のちに彼はわが王国において相応の地位を占めることになるだろう。彼を殺してはいけない。しかし戦争が終わるまでは捕虜として鎖につないでおくように」

 兵士たちはトンチュンをクラから離し、トドンの監視下に置いた。彼らはクラの生皮をはぎ、そのままにしておくと、そのうちクラは息絶えた。彼らは遺体を深い穴に投げ捨てた。のち、その地点の上に白いチョルテン(ストゥーパ)が建てられた。

 軍が二度目の大敗を喫しているとき、シンティ王は家臣からの報告がないのでやきもきしていた。敵に反撃するだけの兵力がないのではないかと恐れ、王はまさにその翌日、兵力を増強しようと考えていた。

 夜の間、神ツァンパ(梵天、ブラフマー)はケサルに何を準備すべきか教えた。そしてシンティ王の増強された軍より先に、王の居住地に達する細い道の上に位置する丘を占拠して王の意表をつくよう促した。

 この助言にしたがってケサルと兵士たちは夜のうちに行動を開始した。夜が明ける前に、彼らは城の前に達していた。彼らは城を包囲し、四方から火を放った。

 火は瞬く間に広がった。聞きなれない物音に目覚めたシンティ王は、自分が炎に囲まれていることに気がついた。すべての出口が燃え盛る障害物で閉じられていたので、彼は呪術的な道具を使って難を逃れようと考えた。悪魔の子であり、妖術にたけていた彼は、魔法の梯子を作り出して、空へ逃れようと考えた。あわてて梯子を出現させ、それに駆け昇ろうとしたとき、ケサルが現れ、邪魔をした。英雄ケサルは矢を放って梯子を粉砕したのである。そしてシンティ王は炎の中にまっさかさまに落ちた。

 シンティ王の娘メトク・ラツェは狂ったようにあちこちを走り回ったが、炎から逃れられそうもなかった。ケサルは、燃え上る城の窓にもたれかかっている彼女を見かけて、こう言った。

「もしあなたが神の種族に属するなら、空中を通って私のところに来なさい。もし悪魔の種族に属するなら、炎のなかに落ちるでしょう」

 若い娘は空中に躍り出て、燃え盛る城の上を越えて、若葉のように軽く舞い落ちて、英雄ケサルの膝の上に落ち着いた。

戦争は終結した。ケサルは山中の地下に隠されていたシンティの財宝を手に入れた。そのなかでももっとも高価なものは、三日目の月の形をした宝石だった。それは見る者の性質や感情によって、あるいは持ち主のまわりに友軍がいるか、敵軍がいるかによって色を変えた。このことは所有者に価値ある情報をもたらした。

 リンに戻る途中、ケサルは若い公女とトドンの息子との結婚を認めた。そして豪華な晩餐で勝利を祝福したあと、ホルやジャンの友軍はそれぞれの国に帰っていった。リンの戦士たちは彼らのテントに戻り、英雄ケサルは宮殿に戻った。

 彼の使命は完了し、魔王は滅んだ。兵士たちも生前は邪悪な勢力であったが、ケサルによって慈愛に富む魂に変えられ、しばらく休んだあと、至福の西方浄土へと送られた。そこで彼らは新しい形の存在となるだろう。

 これらのものは、彼らの行いと他者の力がひとつになり、より善の力を発揮するようになるか、さもなければその力を失うだろう。また徳を持って幸せな存在となるか、さもなければ苦悩の存在となるだろう。このように輪廻はまわるのである。そこから解脱したものは至福の存在である。

 

オーム・マニ・パドメ・フーム! 

 

 偉大なる叙事詩は3人の魔王によって終わるわけではない。このあともケサルは、数多くの戦争と関わることになる。それらはプロローグで述べたように、彼の直接的な使命ではないが、戦う相手は仏法の敵なのである。リンの王として、ケサルは貧しい人々や教育を受けていない遊牧民に文明や幸福を分配せねばならなかった。活動を開始した初期から、彼は薬を国民に分配していた。

 いま、ケサルはタジク王の牛を捕えることによって、リンの牛の血統を改善することができるだろう。モンゴル王の馬も同様の理由で手に入れようとするだろう。トルゴット(Torgots)からは金を、中国からは絹と茶を持ち帰るだろう。

 これらのさまざまな遠征のあいだにさまざまなできごとが起こるが、それを記述するためにはもう1巻の書が必要となるだろう。ここではそのうちのひとつの物語のみを詳しく述べることになる。