夢見る者の死者の書 

バンシー(妖精)を愛して 

 

 他界と接するとき、あるいはそれから逃げ出すとき、度胸やイマジネーションの色彩によって、私たちはそこに美しさも、恐怖も見出す。

 そのすばらしい例となるのは、バンシーに対する人々の反応だろう。バンシーはケルトの民間伝承のなかでは死のメッセンジャーとして記憶されている。バンシーの見かけやおぞましい叫び声は、死が間近に迫っている予兆だとして恐れられている。バンシーはしばしば老婆として、カラスとして、あるいはカラス女として描かれる。

 しかしバンシー(ban shee, bean sidhe)は実際女の妖精である。彼女は驚くほどの美人として現れることができる。彼女は厳しい状況のとき、個人的な、また家族の守護神としてやってくることがある。クロンターフの戦いの前夜、マンスターの王室の一員の前に家族の守護神として現れたことがある。

マンスターの王室の家族バンシーはアーヴィール(Aoibheall)だった。もうひとつの名は、ゲール語を話さない者にとってわかりやすい、またイェイツの『灰色の岩』で使われているイーファ(Aoife)である。彼女はダンラン・オハーティガン(Dunlang O’hartigan)という大胆なマンスター家の若い戦士の妖精の恋人だった。1014年のクロンターフの戦いの前夜、彼女はこの戦士のところに飛んでいき、戦わないようにと懇願した。たったの一日戦場から離れたところにいれば、二百年の寿命と幸福を差し上げましょうと申し入れながら。しかし忠誠心から彼女の申し入れを断ったとき、バンシーは正確に予言した。すなわち彼と彼の友人、そしてブライアン・ボル、そしてエリンのすべての貴族はこの戦いで滅亡すると。

 バンシーの人間に対する愛がいかに深いか、イェイツの詩『灰色の岩』のなかに永久に刻まれている。オハーティガンを愛したバンシーは「スリーブナモンの大きな屋敷で」神を前に、酒を痛飲し、騒ぐ者として現れる。悲しみに暮れた妖精は荒々しく神々を呼ぶ。

 

こっちに来て死んだ男を掘り出して 

このあたりに穴を掘って隠れたはずだから 

そして男を見つけたら嘲笑ってちょうだい 

馬と猟犬ともども叱ってちょうだい 

だって死んだ男のなかでも最低の男なんだから 

 

 彼が「最低の男」なのは、妖精の恋人の警告に従わず、生命を守ることを拒否したからである。神々は妖精が情熱的であることを知っていた。神々は半狂乱になった彼女をなだめるためにワインを飲ませた。体全体がびしょ濡れになるほど飲ませたのである。ここに至ってバンシーはようやく悲しみを忘れることができた。