ドルイドの長の森にて
ロス・ニコルズの生涯と遺産
フィリップ カー=ゴム
ロス・ニコルズは21世紀の最初の何年間かに成長し、おそらく世界でもっとも大きなドルイドのグループになった現代の組織OBOD(オーボッド Order of Bards, Ovates and Druids)の創始者である。この組織は世界中に数千人のメンバーを有し、サマーキャンプやウェブサイト、インターネット・ディスカッション・グループ、数か国語の雑誌、ドルイドの精神性の長距離学習プログラムなどの活動をおこなっている。このようなグループを創始したのはどんな人間なのだろうか。そして彼を触発し、動かしてきたのはどんな重要なアイデアだったのだろうか。また彼はどんなものを人々にもたらしたのだろうか。
1975年に逝去するまで、私は12年間ロスの近くにいて、彼のことを知っていた。9年後の1984年のある朝、まったく予期していなかったのだが、瞑想をしている私の前に彼があらわれた。彼は現代のわれわれにとってドルイドの考え方や実践がどんなに重要かを強調した。そしてOBODの教えを文面に著し、より多くの人の目に触れるようにしてはどうかと提案した。また、死の直前に完成した『ドルイドの書』の草稿をかきあつめるように私に要請した。
つぎの4年間、私はできるだけ多くの素材を集めた。驚くべき偶然性(シンクロニシティ―)の連続によって、手紙や各草稿、詩、図表、メモ、素描、水彩画、そして『ドルイドの書』の草稿を含む発見をし、それらは大コレクションとなったのである。1990年、アクエリアン・プレス(現在のトーソンズ)が出版に合意し、『ドルイドの書』は刊行された。その2年前の1988年、OBODの長に就くよう私はたのまれていた。そのころまでには、大コレクションがほぼ成立していて、遠距離学習プログラムも完成していた。その時点では、こういう研究に興味を持つのは数十人程度だろうと私は考えていた。まさか十年かそこらのうちに、各自の家でドルイド教を学べるというアイデアに少なからぬ人々が想像を膨らませることになるとは夢にも思わなかった。刺激を受け、歓喜した人々の輪は世界中に広がったのである。
こうして書いているいまも、OBODの教えはいくつもの言語に翻訳され、サマー・ソルスティス・アセンブリーという会合が終了したばかりである。そしてオックスフォードシャーのアフィントンのホワイトホースのかたわらで開かれるOBODのルーナサ(Lughnasadh)サマーキャンプの準備を進めている。会合のときには、グラストンベリー・トールの頂上で大きなソルスティス・セレモニーをおこなった。祝祭の様子を見ると、子供たちがストーンサークルのまわりに花弁を投げ、高らかに笑い、機会があるたびに「ホーレイ!」と叫んでいた。私は自分がベルティンのとき、グラストンベリー・トールに登ったことを思い出していた。あれは1970年のことで、私はそのときロスによってOBODに入会するイニシエーションを受けたのだ。当時の儀礼の規模はとても小さく、より形式的だった。それにたいし2001年の強い日差しのもとでの活動は、30年前のロスの考え方や独創性がダイレクトにもたらした結果だといえた。