3章 (要約) 

 そのような特別な子供が生まれた兄弟のセンルンに、トトゥンは嫉妬した。彼は毒や呪術によってジョルを殺そうとした。

はじめ、トトゥンはやさしい叔父さんを装い、子供にこびへつらった。そしてジョルの母親に、子供に食べ物を与える最初の人間になりたいと申し出た。食べ物には毒が仕込まれていたので、食べたらすぐこの子供は死ぬにちがいないと彼は確信していた。しかしジョルは死ななかった。

それからトトゥンは呪術師アニ・ゴムパ・ラジャと交渉し、もし成功したらリンの内部の財宝を分け与えると約束して子供を呪殺するよう依頼した。

呪術師は子供を殺そうとしたが、千里眼を持つジョルはすでに筋書きを知っていた。ジョルはいつゴムパ・ラジャを倒したらいいか知っていたので、母親に小石を持ってきてもらった。彼は自分の周囲の四方に小石を置いた。これらの小石の力を借りて、守護神たちは神の軍隊を現出し、あらゆる危害や攻撃からジョルを守った。

これらの守護神には、3兄弟姉妹神も含まれていた。すなわち長男のドゥンキュン・カルポ、次兄のルドゥル・ウーチュン(ナーガの小さな光)、妹のチャム・タレイ・ウート(完全に輝かしい妹)である。またニェン・ゲゾや9柱のダラ神も含まれていた。

 ゴムパ・ラジャが到着し、ジョルを殺すため、悪魔の力を呼ぼうとした。しかしジョルは逆にゴムパ・ラジャと数多くの悪魔を「解き放つ」と、ゴムパ・ラジャに変装し、ジョルを殺したように装った。

ゴムパ・ラジャの姿でジョルは彼自身の「皮」を取ってトトゥンに渡し、約束したリン内部の財宝を払うよう要求した。トトゥンは言われたとおり、財宝をジョルが扮した偽ゴムパ・ラジャに渡した。このようにして、ジョルは宝を獲得したのである。偽ゴムパ・ラジャは、ジョルの「皮」を残してリンを去るとき、こう言った。

「この皮はまだ死んでないよ」

 その直後に「皮」は動きだし、両眼はぱちりとあき、ほほえんだ。トトゥンはぞっとして、ジョルが本当に死んだのだろうかと疑いを持つようになった。

彼はゴムパ・ラジャが修行している洞窟へ行った。その入り口は大きな丸石でふさがれ、境界を示すしるしが記されていた。なかを覗きこむと、ゴムパ・ラジャに払われた財宝が入ったカバンが置かれ、彼の道具が丸石に立てかけられていた。ジョルはやはり死んだのだと思い、トトゥンはうれしくなった。

そしてネズミに変身して洞窟の中に入った。ひとたび中に入ると、カバンも道具も見つけることができなかった。トトゥンは、ネズミの姿をしているので、それらを見ることができないのに違いないと考えた。そこで彼は頭だけ人間に戻したが、胴体はネズミのままだった。

人間の頭は周囲を見回したが、やはりカバンも道具も見当たらなかった。目を凝らすと内部はすべて焼け焦げていて、真っ黒だった。

そのときジョルが現れ、魔法を用いてトトゥンを縛り上げたので、彼は人間の姿に戻ることができなくなった。彼は必死にあやまり、大げさな口約束をして、なんとか魔法を解いてくれるよう頼み込んだ。