第4章
ある夜、ジョルの夢の中に、ダーキニーの海とともにパドマサンバヴァが現れ、予言と助言を与えた。
「おまえはマ谷を支配し、奇跡的な力によって人食いの悪魔どもを調伏しなければならない。そしてリンの人々の夢や特別な兆候、占いなどを変え、おまえが神聖なる子供であることを示さなければならない。
おまえはリンから追い出され、母親とともにマ谷へ行くことになるだろう。マ谷は悪魔の地であるホルの国やその他の国々と接しているが、おまえはそれらを征服しなければならない。マ谷のマギャル・ポムラ山の神はチベットの基本的な守護神である。マ谷はチベットの心臓部なのだ。
さあ、そこは荒地である。ナキウサギが川や牧草地の主人である。豊かな交易の道がこの地を通り、つねにホルからやってきた強盗が出没する。道はすべて狭く、あてにならない枝道ばかりである。犬はいないが、ナキウサギがかみついてくるだろう。豹はいないが、狼に殺されるかもしれない。おまえはその地を所有しなければならない。
おまえは手におえない、型破りなおこないによって、リンの人々の信仰を破壊するだろう。おまえの母、ゴクサは魔女であり、子のジョルは人食いの子であるという噂を広げよ。つねにリンの国の法を破り、悪しき夢と不吉な前兆をもたらすのだ。そうすればこの地から追放されるだろう。
この屈辱によっておまえの内なる良質さがあきらかになるだろう。諺にも言う。
<内なる至上の虎の良質さは敵によってあきらかになる>と」
ジョルはこの予言的な助言にしたがって、殺人や人食いを含む数多くの犯罪をおかしたように見せた。ついに彼は、呪術的な幻影を作りだすに至り、将来の王妃である若い乙女のドゥクモも、ケサルが叔父トトゥンの部下たちを殺したところを見たと信じたほどである。
彼女は自分が見たと思ったことを人々に話したのだが、彼女は人から愛され、尊敬されていたので、みなその話を信じたのである。トトゥンの部下たちは実際森で行方不明になっていた。ジョルと母が追放されたあと、彼らは森から戻ってきた。これはつまりパドマサンバヴァが命じたとおりに、ジョルと母がリンから離れたということなのである。