6章 (要約) 

 ある冬、生命を脅かすほどの大量の雪が降り、リンの国は国中がすっぽりと雪に埋もれてしまった。マの谷は、しかし春のように暖かかった。ギャツァ・シェーカルと5人の戦士は、マ地方へ行って、厳しい冬が過ぎ去るまで、リンの住人がここに住むことができるよう、ジョルに嘆願する任務を負った。

彼らがマ谷に近づく前に、ジョルはそれを察知した。ジョルは彼らの鼻をへし折ろうと思い、彼らが近づいていることに気づいていないふうを装った。

彼らが間近に迫ると、ジョルは石投げ器(パチンコ)で石を投擲した。するとそれは彼らの近くの大きな岩を粉砕した。そのすさまじい音は戦士たちを震え上がらせた。何人かは気を失ったほどである。

ジョルの仕業だとギャツァが気づいたとき、ジョルは態度を豹変し、彼らを暖かくもてなした。ギャツァとジョルの間で言葉のやりとりが交わされ、リンの人々がマ谷に住むということで合意がなされた。

ギャツァはその知らせを持ってリンへ戻った。そして人々は必要なものを集め、長い旅の準備を整えた。彼らがマ地方に着いたとき、ジョルは聖なるマ谷のすばらしさを讃える長い歌をうたった。そして30人の戦士にそれぞれ一定の土地を配分した。歌のなかで、彼は自身をジョル王と呼び、つぎのように描いた。

「外に向っては、ぼくはひとりぼっち。さまよう乞食の子供だ。内に向っては、ぼくはダラ戦神にとってのお城。だけどじつは、ぼくはすべての勝利者の化身である」

 リンの人々はみなジョルをほめたたえ、口々に言った。

「ムクポの王統の出身者に期待せずにいられようか?」

 ケサルの叔父トトゥンひとりが、忸怩たる思いをしていた。ジョルが叔父に与えた土地は、もっともやせていたからである。しかしトトゥンの息子にはすばらしい土地が与えられたので、トトゥンは気分が完全に落ち込んだわけではなかった。

 マ谷の土地の精霊はリンの人々を守り、育んだので、貧しい者は豊かになり、弱い者は強くなった。

あるときジョルは人々を集め、マギャル・ポムラ下部から精神的宝であるテルマをあきらかにした(発見した)。これには黄金のシャーキャムニ像や法螺貝でできたアヴァローキテーシュヴァラ像、トルコ石のターラー像などが含まれた。彼はまた、儀礼のためではなく、軍のための法螺貝の角、太鼓、銅鑼、旗などを発見した。加えて、彼はほかの宝を得るための鍵と地図をあきらかにした(発見した)。

この光景を見た者はみなその奇跡に心を動かされた。さらに空から降ってくる花の雨や、大気を満たす虹のテント、大地から立ち昇る甘い香気といったすばらしい徴(しるし)を目撃することになった。

これらの吉祥のできごとのあと、リンはいっそう花開いた。それぞれの戦士は各自の土地に城を建て、人々は繁栄と幸福を享受した。