独龍江のよいどれシャーマン

前号では、食糧難や豪雨に負けず、雲南省最奥の地、独龍江を遡り、顔面に刺青を入れた伝説の女シャーマン、クレンに会った話を書いた。
 クレンは悪魔祓いの技量において右に出る者がいなかった。あるとき、若い小学校教師の男がデゲラという夢魔にとりつかれた。デゲラは可愛らしい少女の姿をとって毎晩夢の中にあらわれ、教師と交わった。夢の中で愉しむんだからいいじゃない、と言いたくもなるが、とりつかれた者は憔悴しきって最後には死ぬと相場はきまっているのだ。クレンは二組のカップルに協力を求め、派手なかっこうをさせ、楽器を演奏しながら長距離を闊歩させ、デゲラをおびきよせた。そして守護霊であるナムの助けによって、トンボでも捕らえるかのように竹竿の先にとまったデゲラを縛り上げるのである。

 独龍江の上流ではションマというタイプのシャーマン(男)に会った。ションマという守護霊がふたりついているのでションマといわれるわけだが、酒の力を借りるという特長は、崖鬼のつく低級シャーマン、ウに近い。そう、この男はどう見てもアル中なのである。
 ションマはたまたま近くにいた眼病を患っている顔面刺青の女を治して進ぜようと言った。儀式を始めたションマは目を瞑り、神経を集中して呪文のようなものを唱えていたかと思うと、突然かっと目を見開き、腕を上方に伸ばし、虚空からなにかを受け取った。守護霊から賜った目に見えない秘薬(粉薬)というわけだ。それからなかば無理やり、刺青女に酒を飲ませる。
 その後目が癒えたかどうか、たしかめるすべがない。