強力なパワーを持ったシャーマン(ビルマ語でサヤー)がいる、と聞いてポゥパー山北方の丘に会いに行った。それがチョー・ウェイ氏である。聾唖者である氏はハンディを負った分、特殊な能力を神から授かっていた。
のどかなミャウッチョー村
「やばい」私は気が動転した。「このままでは死んでしまう!」。
と、氏は手を抜き取り、ピンセットのようなもので挟んだ物体を小皿の上に落とした。暗褐色のタール状のものである。これが病気の原因というわけだ。
翌日、「あの治療を受けて調子はどうですか」とこわごわ聞くと、「頭ががんがんする」とすこし不満気だった。
一週間後おなじ質問をすると、「なんかふわーっとして、気持ちいいですなあ」とご満悦だった。いったいこれは効いたということなのだろうか。
土佐桂子氏によると、ミャンマーで広く信仰されるウェイザーとは、「錬金術、呪符、マントラ、偈文などの習得によって、超自然力(空が飛べる、海に中を自由に行き来できる、食物なしで活動できる、傷を受けないなど)を得て、究極的には不死身の身体を獲得した存在」だという。
そうすると、チョー・ウェイ氏はウェイザーという超能力者ということになる。ミャンマーでは、ナッ神信仰はアウトサイダー的だが、ウェイザー信仰は上座部仏教にとってもけっして異端とはみなされないのだ。大仏を見ればわかるように氏は相当の額の寄進をしている。高徳の僧のように氏はみなされているのである。
インと呼ばれる呪符。四大要素を表す文字でできている。
⇒ ミャンマーの呪符イン
チョー・ウェイ氏は窓から外に手を差し出す。
空中から掴み取ったのは、無数のダッロン(金)だった。
息を吹きかけるのは治療師の常套テクニック。
ピンセットのようなものを喉の奥に入れる。
喉からつまみだされたコールタール状のものが病の原因。
不思議な水色の玉を入れた清水は治療効果があるという。
水色の玉をパチンコで四方に向かって放つが、なぜかいっこうに玉の数が減少しない。