シャーマンってキ印がなるんじゃないの? 残念ながら、そういった偏見がいまだに残っていることは否定できない。しかしそれはまったくの誤解で、レコン(青海省同仁)のソグル村のシャムワ・ザシのような、尊敬を集めた模範的、常識的な社会人シャーマンもいるのである。
シャムワは、前々回のタンゼンブムと同様、村の三十年ぶりのハワ(シャーマン)選びによって選ばれた二人のハワのうちのひとりだ。寺のお堂に村のすべての若者を十日間閉じ込め、憑依した者のなかからチベット仏教の活仏が選び、認定したものである。
シャムワは選ばれたものの、ハワにはなりたくなかったので、ひそかに別の活仏に頼んでハワにならないための儀礼を受けようとさえした。しかしある夜、家の屋上を馬がカパカパと駆ける音が響き渡り、建物全体がゆさゆさと揺れた。夢の中では白馬に乗った将軍が白いカタ(儀礼用スカーフ)をかけようとするが、断ると、彼のからだをぐちゃぐちゃになるまで踏み潰した。こういったことが続いたので、シャムワはハワになることを受け入れた。
ひとたびハワになると、シャムワはその素質を存分に発揮した。ダクルン神やロンポシャンパ神といった神々が憑くときはもちろん、主神の荒ぶる戦神ダンドゥ・ワンチュクが憑依すると、堂のなかで跳ねとび、まさに狂ったかのように暴れまわった。尋常でない神がかりのせいか、シャムワはいつしかレコン地区No.1のハワと目されるようになった。
神が抜けると、シャムワは普通の好青年に戻る。何度か話をしたことがあるけれど、気遣いを忘れない高潔な人物という印象を受けた。それとも狂気や霊的才能を押し隠すためにそんなポーズをとっているのだろうか。