アッラーの名のもとのケサル王 パキスタン北部バルチスタン 
チベットの英雄叙事詩ケサル王物語の語り手である80歳のムハンマド・チョー。
半盲目のイスラム教徒は、カラコルム山脈の谷間に私を案内し、
白い線状の模様が入った岩を見せた。
「これはケサルの王妃ドゥクモが流した乳じゃよ」
ドゥクモは敵のホル国王にさらわれ、子をもうけたが、
その幼い子は無情にもケサルによって殺された。
もう子はこの世にいないのに、乳腺が張り、乳が流れた。
それが悲しくて、ドゥクモの涙も頬をとめどなく流れた。

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