ケサル王 勇者の歌 ダグラス・J・ペニック (宮本神酒男訳)
第7章
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ある朝早く、ケサルやリンのほかの人々がまだ寝静まっている頃、暁(あかつき)のひきしまるようにさわやかな光のなか、セチャン・ドゥクモは目覚めると、山の麓まで歩いていった。そこで彼女は四方の純粋さに向かって「純粋な存在の虹の宮殿」というおのずから生まれた歌をうたった。ケサルのすべての戦いが終わり、歌も戻ってきたのである。