*訳注 マネネと白梵天ついて 
 通常ケサルを導く女神はナムメン・カルモ(gNam sman dkar mo)あるいはゴンメン・ギャルモ(Gong sman rgyal mo)として登場する。アネ(a ne)またはネネ(ne ne)すなわち叔母(父の姉妹)と呼ばれる。このマネネはマン・アネ(sMan a ne)だという。
 これはもちろん天界の話なので、父親は白梵天(Tshangs pa dkar po ブラフマー。妻は'Bum skyong rgyal mo)か
白天王(bDe mchog dkar po デムチョク、ヘールカ。妻はデムチョク・マモ)で、その妹ということになる。
 このブラフマー夫妻から生まれた3人兄弟はドンカル(Don dkar)、ドンレク(Don legs)、ドンドゥプ(Don grub)、あるいはノルブ・ダンドゥ(Nor bu dgra 'dul)、ノルブ・ディメ(Nor bu dri med)、トゥパ・ガワ(Thos pa dga' ba)で、3番目(末弟)がケサルの天界における姿である。
 ちなみに、偶然かもしれないが、トゥパ・ガワはミラレパの本名(トゥパガ)とほぼおなじ。耳に心地よいという意味。
 白梵天などの白は美称。リンの国もチベット語では白リンと呼ばれることが多い。とくに深い意味はないが、白色崇拝と関係があるといえよう。
 いうまでもなく、梵天はヒンドゥー教の梵天(ブラフマー)から来ているが、インドラ(帝釈天)と同様、仏教に取り入れられて卑小化した。チベットではラ(Lha 神、精霊)の親玉といった認識だろうか。