亡霊 

 むかし、ある商人が夜遅く帰宅を急いでいました。ふと見ると、塀の脇に年老いた、貧しい、色黒の男がいたのです。だれも彼を家に入れてやろうとはしませんでした。子供たちが彼を恐れたからです。でも商人は男を助けようと決心しました。彼は老いた男を家に招き入れ、暖かいスープと衣服と寝床を用意したのです。

 夜半、窓の近くに寝ていた男は突然起き上がり、音をたてました。ふたりの侵入者が窓から家に入ってこようとしていたからです。

 年老いた男は手を上げて、大きな声をあげました。

「おまえたちは何をしているのか?」

「うわあっ、亡霊だ!」白いパジャマを着た色黒の老人を見た侵入者たちは、そう叫びました。彼らはあわてて窓から飛び降りました。ひとりは足を骨折し、もうひとりは頭を怪我しました。物音がしたので商人と家族は起きてきて、侵入者たちを捕まえることができました。

 このすばらしい話はわれらの予言者の言葉を思い起こさせます。

 

 たしかにアッラーの神は、兄弟を助けるような神の僕(しもべ)をお救いになられる。