フードゥー教入門第3章
フードゥー教のエレメント
多くの呪術の実践におけるエレメントは、水、気、火、地に集約される。フードゥー教においてもこれらのエレメントの力は認識されるが、実践はもっと深いところまで認識される。わたしたちは自分のまわりの世界や精霊の領域の物と物の結びつきまで見ることができる。またたくさん象徴やまじないを作り出す代表的な呪術がある。この呪術は力強く、人生を変えることができる。この章では、フードゥーの実践に生気を与え、これらエレメント間でいかに精霊が作用するかを説明する基本的な力にスポットを与えよう。この概念を理解することは、まさにあなた自身のお守り、呪文、儀礼を作り、発展させるのに大いに助けになるはずだ。呪文がユニークであればあるほど、あなたにとって効果がある機会がより大きくなることを理解すべきだ。
本書であなたと分かち合えるおまじないは、とても効果的な標準的なものだ。しかし状況はすべてが違うものなので、もしあなたが必要に応じたまじないを作り出すことができるなら、結果はよりパワフルなものになるだろう。
個人的なルーツと所有する力を理解することが、おまじないの効力を決定する要因となる。たとえば健康的になりたいと願って野菜を買うためにスーパーに行くことを考えてみよう。一般的に言って、あなたにとって野菜はいいものである。実際あなたの健康の目標に関してどの野菜がいいか知っているなら、正しいものを買うことができるはずだ。同様に、根をとくに呪術的に必要なものを選ぶなら、時間とお金の無駄を防ぐことができるのである。それはよりよい結果を得ることにつながるだろう。
わたしにはある問題をかかえたクライアントがいた。その問題はわたしが伝えたいメッセージを浮き彫りにしていた。彼女はある男性と恋に落ちた。そして長い間いい関係を保っていた。しかし突然彼は離れていったのである。彼が彼女を愛していることはわかっていた。しかし愛情とふたりの関係に集中するのが困難になっていたのである。そこで彼女はオンラインショッピングのサイトを開き、ラブ・ポーション(愛の媚薬)を見つけた。ラブ・ポーションを使ったあとの数日間はすべてがうまくいっているように思われた。しかし数週間もすると、またおなじ問題に悩まされるようになった。わたしのところにやってくるまでそんなことが何か月もつづいた。彼女は自分が儀礼やまじないをおこなえるとは思っていなかった。それは完全に間違っていた。しかし問題はそこではなかった。
問題は彼女が一般的な愛を引き寄せるまじないを使っていたことだった。男はすでに彼女を愛していたのだ。彼女は自分の状況に特殊な何かが必要だった。しばしばわたしはクライアントが望む結果をもたらせるよう何段階かのステップを踏む処方をすることがある。そしてこの場合、コリアンダーを含む愛の引き寄せの入浴から始めた。コリアンダーは貞節をもたらすのだ。わたしたちはこのあと赤いキャンドルと関係性に熱を添付するシナモンを使ったキャンドルまじないをおこなった。これはクライアントに効き目があったようである。ふたりはそれから十年、結婚生活を送っている。
先祖の精霊
わたしたちはしばしば自分たち自身を「知っている」と言われる。これはわたしたちが好きなもの、嫌いなもの、社会文化的なアイデンティティーを知っていること、そしてもっとも奥深くの思考とつながっていると解釈される。これらのすべてはすばらしいことだ。というのも自己の強い感覚を持つことは、今日の世界において自分のやりかたを確立する必要があるからだ。そうでなければこの80億人近い人口を持つ世界の他者と自分をどうやって区別できるというのだろうか。自己を知ることによって、残りの人々との違いを際立たせることができるのだ。フードゥーを実践することによってあなたは否応がなしに一歩進むことになる。あなたは自分のルーツ(根)を知ることが必要になる。あなたの祖先はあなたのルーツ(根)である。あなたの前にやってきた人々は、あなたと血のつながりを分かち合う人々なのだ。
すべての有効なマジックのなかで血のマジックがもっともパワフルで、もっとも効力があり、もっとも危険だと考えられている。血はあなたの前に生きた人々と直接につながっている。科学的な意味において、あなたの来歴はあなたの血で書かれる。これはつまり科学がいかにあなたのDNAが血族と結びつけることができるかということであり、このDNAが何世代もたどれるということである。先祖のマジックは血を超えて伝わる。それはあなたの前に生きた人々が残した本質なものを物語っている。あなたは誰かがいたからこそ生まれたのであり、その誰かは誰かがいたからこそ生まれたのであり、その誰かは誰かがいたからこそ生まれたのであり……とつづいていく。この血統の知識があってこそ、あなたはつながりのパワーと結びつくことができる。
あなたが祖先を認めるかどうか、つねに祖先の借りをあなたが返している可能性があるのは本当のことである。それはいいことかもしれないし、悪いことかもしれない。それは彼らの行動、あるいは行動しなかったこと、語られた言葉、そして血統に属するすべての者のなかに流れた感情のことなのである。いままで感情をコントロールできない人に会ったことがあるだろうか。人の血統を調べると、こうした特徴を示した人を発見することになるかもしれない。
ある人々が尋常でない数の幸運を経験するのは、こうした理由からである。それは「幸運の女神」があなたの肩の上に立っているからではない。かわりに世代から世代へ受け継がれる報いが受けられる何かを先祖がしたのである。不幸にも、その反対もありうるのである。もしあなたの先祖が激しい、重大な攻撃を加えたことが呪いを引き寄せたなら、その呪いは子孫にかかってしまうだろう。呪いや祝福を超えて、わたしたちの血統につながるパワーがある。このパワーを認めることに失敗すると、それがほとんど存在しないと感じるまで、時間を超えた能力を弱めることになる。
それはパワーが突然消滅するということを意味するのではない。祖先を認識することによって目覚めるまで休眠するのである。自分の銀行口座について考えてみよう。つねに口座の出し入れをしていけば、それはアクティブの状態にあるが、長い間放っておくと、それは徐々に休眠口座になってしまう。口座が閉鎖されるわけではないが、たんに休眠状態に入ってしまうのだ。祖先の精霊はわたしたちを導いてくれる。というのも、われわれが見えないものを彼らは見ることができるからだ。以前に起こったことを彼らは経験している。そして彼らが言うように、歴史はおのれを繰り返すのだ。あなたが過去の間違いを繰り返さないようにするために、ほかの誰がいるだろうか。彼らの助けが必要な儀礼をするときに、あなたと直接結び付く精霊は、漂っているだけの精霊と違って、喜んであなたに協力しようとするだろう。これら要因についてよく考え、儀礼を始める前にそれらを理解しよう。
あなたの祖先に敬意を示すために彼らのためにあなたの家の一部を提供しよう。祖先の祭壇はフードゥーにとって重要な場所である。というのもそれば祖先をあなたの生活に招く場所だからだ。あなたは祖先を呼ぶために祭壇を利用することができる。小さな卓は祭壇にはもってこいだ。もし先祖の写真を持っているなら、それらを卓の上に置くといい。その横には水の入ったコップを置こう。食べ物やウイスキー、ラムなどのアルコールでもいいかもしれない。毎週欠かさずこれをおこなおう。
根の精霊
フードゥーはもともと根の呪術と呼ばれた。というのもフードゥーの実践は身体的、精神的な補助材料として根やハーブが用いられてきたからだ。たとえばもしあなたが片頭痛持ちだとするなら、それを治すための植物がある。もしあなたが人生にもっと幸運が必要だとするなら、同様にそうなるための根がある。
人類が科学やテクノロジーに恋に落ちる前、われわれは自然と深い絆を持っていた。自然との基本的なつながりとは、植物との関係だった。特殊なまじないのために特別な方法で植物を活用するとき、望む結果を得るためにあなたは植物の中の精霊に入り込むことができる。
わたしたちはつねに植物が心、からだ、精霊の間のつながりを構築するのを助けてくれることを知っていた。ある植物はこの世界と精霊の世界の間の壁を取り払ってくれる特殊な能力を享受している。それらはあなたが別の世界へアクセスするのを許してくれる。あなたはその世界から精霊と接触し、あなたの問題に対する直接的な答えを得ることができる。
根は愛や幸運を引き寄せ、悪からあなたを守り、望ましくない人々を遠ざける。根はあなたが職を得るのを助け、昇進させ、あなたの精霊や家を浄化する。市販の愛のまじないを買う以上のことをしたいなら、どの根がいいかを知ることは重要である。
言葉のように根にはたくさんの微妙なニュアンスがある。多くの根が愛を引き寄せることができる。しかしどれを、どの場合に選ぶかが重要になってくる。コリアンダーは愛の誠実さを引き寄せ、ジンジャーは情熱と熱意を加える。ブドウの蔦は人々を結束させ、レモンのバルサムは愛から悪運を取り除く。ギンバイカは長期間の関係、あるいは結婚に愛の情熱を維持させる。愛のための根はもっとたくさんあり、おなじ種類のニュアンスがほかの種類のおまじないにも適用できる。
地の精霊
本書第1章の冒頭で、土手近くで掘った土を使った、富を引き寄せるまじないについて述べた。なぜそれを用いたかと言えば、そのあたりの土は、水を含んだスポンジのようにエネルギーが沁み込んでいるからだ。土手はお金を引き寄せる場所であり、お金を引き寄せるエネルギーが土に入り込んでいるのである。
同様にヒーリングのために病院近くの土を、あるいは運を引き寄せるためにカジノ近くの土を使うことができる。あるいはほぁの誰かに悪を引き寄せるために悪人の墓の土を使うことができる。フードゥーは愛と幸運のまじないだけではないのだ。
フードゥーでは、地面に電流をアースするように、土に呪文を通す。根の、あるいは先祖のマジックはパワフルである。しかしパワーの強さは一点に集中され、コントロールされる必要がある。そうでなければ思いがけない結果に終わってしまうだろう。呪文のかかった土によってそれを安定化し、静め、あなたが望んだものへと導いていくだろう。もしクライアントが彼女の人生に愛を引き寄せるまじないを望んだら、わたしは教会の土を利用するだろう。わたしたちが引き寄せた男はよき人となるだろう。悪い男から愛を引き寄せるほうが簡単ではあるが。
地が富に満ちていることは誰もが知っている。あなたが希少な石(宝石)や希少植物を思い浮かべるとき、実際、地が持つ富はもっとも持続できる富だと言えるだろう。あなたがそれにまじないをかけて、地の精霊を呼ぶとき、富のエネルギーを活用し、あなたの意志に変えるだろう。
こういった理由から呪術のための土を得る場所を選ぶのに、目が肥えていなければならない。たとえば砂漠から土を得るとすると、一般的には乾燥性と不毛性を引き寄せることになる。だからこそ、呪いをかけるとき、ほとんどの呪術実践者は彼らが呪いをかけたい対象者を象徴した場所に行くのである。
いかなる呪文をかけるときでも、あなたが使用するエレメントや道具に関係なく、呪文をかけるものに対して十分注意しなければならない。ほんの些細なミスでさえあなたが作り出そうとしている呪術のバランスを変えることができるのだ。それゆえ、あなたが土を選ぶとき、賢く選ばなければならない。そして意味を理解する。それを使う前に、できるかぎりその歴史を知ること。標準的な呪文のために本書のなかでどれが地の精霊の助けを必要とするかについて語ろう。土が豊かで肥沃な場所へ、実際に植物が成長し、繁茂する場所へ行くことをわたしは勧めたい。呪術の実践において、そしてフードゥーの技術において成長すれば、ほかの場所から来た土について調査を拡大することができる。
墓場
正直に言って、ビギナーが墓場でフードゥーの呪術をおこなうことはできない。精霊と呪術をおこなうには、ビギナーが持ち合わせていない高度な直観を必要とするからだ。それに墓場の精霊は危険である。知らない地域に歩いて入るかのように、一部の人々はあなたを見てこころよく思わないかもしれないし、あなたを傷つけようとするかもしれない。墓場で呪術をおこなう前に、家の祖廟で、祖先の精霊による呪術の体験を積むことをわたしは強くすすめる。しかしながら、墓場について論じることを少なくとも投げやりにするわけではない。というのも、そこは墓場であり、そこに住むのは精霊たちだからだ。それはフードゥーの重要な部分なのである。
墓場の魔術は祖先の精霊のパワーと地の精霊のパワーの組み合わせのようなものでる。この組み合わせがいかにパワフルか想像してみるといい。ハリウッド映画のおかげで多くの人は墓場といえば悲しみや嘆きを連想し、あるいは恐怖を感じるかもしれない。フードゥーではこの見方に与しない。実際、死は起こりうることのなかで最悪なこととみなされるわけではない。ネガティブな体験と見られているわけでもない。もちろんわれわれは愛している人々が肉体を持った姿でいつまでもいっしょにいたいと考える。だからこそ失ったときに痛みを感じる。しかしこの世界を超越した世界があることを同時に理解している。死は橋であり、つまり旅の終わりにすぎず、もうひとつの世界の始まりなのだ。
墓場の魔術はパワフルだが、あなたが考えるような理由からではない。墓場の土はそれが偏移の場所だから使われる。すなわち終わりの場所であり、始まりの場所である。もしあなたが人生におけるサイクルの終焉を見ているなら、つまりそれが分裂し、崩壊しているとするなら、墓場の土はまさにあなたが必要とするものかもしれない。そしてまた、関係があなたの身体的健康、精神的健康を損ねるものなら、あなたは墓場の土について考えるかもしれない。
それはまた新しい始まりの到来を告げるものなのだ。終わりは新しい何かの始まりを意味するのである。何か新しいことを始めようとするなら、また新しい局面のために祈りはじめ、自己を鼓舞するなら、墓場の土は最高のオプションになるかもしれない。
あなたがどこで土を得るかに注意を払うように、とくに土を得る墓地や墓に神経を注がなければならない。危険なサイコパスの死者の墓なら、あなたは不安定なエレメントをいま行おうとしている呪術に入れようとしていることになる。
墓場の土を集めるために墓地に入るとき、注意しなければならない。あなたの呪術のために採集する土の精霊をなだめることが重要である。あなたはいつも数ペニー埋めるとか、ウイスキーを地面にこぼすなどして、取った土のお代を払わなければならない。わたしは長年やってきたので学んだのだが、墓場を掘るのは他人から見たら相当に奇妙に映るので、墓場の横に新しい花を植えるように見せかけた。
呪術をおこなうときにともにやっていく精霊を探すのに、あなたはカードやペンドラム(振り子)を用いるかもしれないが、わたしは本能や直観を用いる。なぜなら長年わたしはそうしてきたからだ。墓場を散歩して、場所とそこに生きている精霊を感じるまで時間を費やす。ついにあなたはひとつの特別な墓に心惹かれるかもしれない。会話を始める前に、できるならそこに埋められている人について調べることをすすめる。生前、いい人だったか? 母、父、看護人、賭博師だったのか? もう一度言おう。精霊が危険なこともあるのだ。リサーチするにこしたことはない。
呪術をおこなうのにちょうどいいパートナーの精霊を見つけたなら、捧げものをして始めるといい。直観か占いのテクニックを使って精霊が欲しがるもの――それがお酒にしろ、食べ物にしろ、タバコにしろ――を感じとるといい。精霊と会話をして精霊が話すことを聞くことを学ばなければならない。しかしこの種の取引の関係に踏み込みすぎてもいけない。友人になればいいのである。何日か何週間かのち、あなたは友人に頼みごとをすることになる。つまり彼らの墓場から土をもらい受けることになる。
十字路
二つの道が交わるところには可能性が生まれる。フードゥー教徒のわたしたちは、新しい機会につながる道を開く呪術をおこなうために、あるいは人生のなかで欲しないもの、たとえば悪運や悪人などを自分から取り除く呪術をおこなうために、十字路を訪れる。フードゥー教徒は十字路から旅のはじまりを連想する。それゆえ十字路はお守りの呪文として用いられることが多い。墓場のように、十字路は移り変わりを象徴する。大きな違いは、それはぞっとする終わりの意味を含む言葉ではないことだ。
ルイジアナのこのあたりでは、十字路にさしかかるたび、道の曲がり角に捧げものが目に入るだろう。こうした習慣はアフリカの多くの地方でも一般的である。そうしたところでもフードゥー教が信仰されているからだ。十字路はまたあなたが作り出した呪術の残りを処理するのに最適な場所と考えられている。というのも十字路は一般的に、魔術におけるニュートラルな場所とみなされるからだ。だからもしあらかじめ力のあるものを作り出していたなら、そしてそのパワーを中和したいと考えるなら、呪術をおこなった残りを取り出して十字路に置くといい。その日が過ぎるまでに、パワーは消えているだろう。
十字路の呪術を含む呪術は夜遅くか早朝におこなわれるのがいいとされる。呪術をおこなうとき、そのことを覚えておくのがいい。最大限の効力を得るために、深夜と翌朝の間の瞬間にそこへ行くべきだと主張する人々もいる。
調和を見つける
食事の支度をしているとき、その過程においてあなたがやるべき最初のことのひとつは、風味のバランスをとることである。というのもあなたはたくさんの異なる材料を集めるものの、それぞれの材料が独特の風味をもっているからである。もしそれぞれの風味がたがいに補っているかどうか、注意を払うことができなければ、ある風味が他の風味を圧倒することになってしまう。それは食べ物の味を損ねたり、少なくともネガティブな影響を与えたりしてしまう。おまじないをするとき、おなじ原理が働く。力の均衡を生み出すとき、あなたは多少とも几帳面でなければならない。力の不均衡を許してはならない。それが結果におおいに現れるからである。呪文が一見したところシンプルであるかどうかは重要ではない。あなたはまじないをおこない、進めて行くなかで、エレメントに気づかなければならない。
呪術によっては多大な力をもたらすものの使用を必要とする。とくにそれらが祝福されないとき、浄化されないとき、あるいは前の持ち主のメンタルが不安定で、そのものに霊的残滓が残されたときがそうだ。呪術にそれが加えられるとき、あなたはすでにバランスを失っている。この人工物から引き抜かれるパワーを安定させ、相殺するほかの材料をあなたは探すことになる。
すでに述べたように地は安定化するパワーである。そしてそれを利用することで呪術の基礎をなし、調和をつくりだす。しかしもしあなたが使っている地の源がはっきりしないなら、これがいつも十分というわけではない。すべてのフードゥー教信仰者が、初心者であれ、専門家であれ、調和の道具をマスターするよう努力しなければならない。フードゥーはわたしたちの領域の外側のものと通じることができ、これはわたしたちの意識の外側のものの端をしばしば忍び足で歩いていることを意味している。
こうしたことから一部のフードゥーの専門家は、呪術によってあなたが端をよろめきながら歩くことになると述べる。もしこまかい点をしくじるなら、それがどんなにこまかくても、バランスを失い、悲惨な結果を招くことになる。この旅を始めたとき、あなたは毎日の生活にインパクトを与える小さな変化を起こすシンプルな呪術のことを考えたはずだ。まったくそれで問題はなかった。しかしそれによってバランスを保つために戦う責任から逃れられることはないのだ。
もう一つの見方がある。それぞれ呪術をかけるたび、あなたはある一面からエネルギーを吸収し、その場所にからっぽの空間を残すことになる。道具を使って除去しながら、あなたは取り除いたエネルギーがのちに問題を引き起こすカオスを作り出さないことをたしかめるべきである。
清めと浄化
清めと浄化の儀礼はいかなる宗教にとっても、スピリチュアルな活動にとっても特別なことではない。どの宗教でも一律におこなわれるのだ。あなたがクリスチャンでも、フードゥー実践者でも、仏教徒でも、あなたの精神面を開拓するためにも、清めの儀礼は必要なのだ。これはフードゥー教徒にとっても真実である。ビギナーはしばしば清めの儀礼の段階を経ないで呪術の世界にダイレクトに飛び込んでしまう。もしあなたがフードゥー教の教師のもとで学んでいるなら、浄化と清めの儀礼は最初に教えられることのひとつである。というのもそれは途中経過において不可欠なものだからだ。それはあなたの精神面、感情面、身体面を浄化する。そしてあなたの旅のつぎの段階のために精神面を開拓する。精神面の情かはあなたが身体的に汚れていることを意味するのではない。あなたがコントロールできない何かによって汚されたか、人生においてあきらかにしたいという欲望を遮断されたことを示しているのだろう。
適切な道具類と素材、エレメント(元素)をもって、スピリチュアルなオープニングをはじめることができる。それによってあなた祝福を手に入れることができるのだ。いま、浄化の入浴あるいは清めの儀礼によって魔法がかけられるというイメージとは違って、香り高いハーブとオイルのあたたかいバスタブの中に体を滑り込ませる――そこであなたは香水のオイルとキャンドルにうずもれている――ということはない。そのかわり通常起こりうるのは、あなたを精神的に解き放つという診療的な目的を達成するために、あなたの体の上に入念にパワーのあるハーブやポーションを落としていく。幸運なことに、浄化儀礼の効果はたちまちあらわれる。それが起こった瞬間にあなたは感じとることができる。それがどのように起こるかは、あなたの儀礼の目的が何であるか次第だ。たとえばあなたの目的が愛のまじないをかけようとして、あなた自身に愛を受け入れさせることなら、浄化のプロセスはあなたの足の上部からはじまることになる。もし目的がネガティブさを排除することなら、浄化のプロセスは反対方向に、つまり頭から下の方向に働くことになるだろう。
儀礼のタイミングにも注意を払わなければならない。それは夜明け前におこなわれる。就寝前のやることリストの最後の項目になってしまってもいけない。それを実行する前には誰にも話してはいけないことも確認しなければならない。夜明け前に起床して、儀礼をはじめ、決まりきったことをやらねばならない。あなたが期待するよりも早くあなたは終えることができるだろう。浄化の入浴を終える際には、普段栓を抜くように、水がバスタブから排出されないようにしなければならない。そのかわり、もし何かをあなたの人生に取り入れようとしているなら、呪術のかかった残滓を含む水を東へ、つまり太陽が昇る方角へふりかけてほしい。しかしお守りの呪文を作って何かを払い落したいとき、この水の残滓は十字路に向かって振りかけねばならない。
浄化と清めの儀礼についてはあとで詳しく述べるとしよう。いま、これらは基本なので、あなたはなじむ必要がある。本章で論じるこのテーマに関してできるだけ多くの本を読むよい。学ぶべきものをマスターし、あなたが与えられた指令をたしかに意識するのがいい。つまりいつでもバランスを保たねばならない。さていまやあなたはつぎのステージ、ルートワーク(根の呪術)を学ぶ準備ができているはずだ。