はじまり
ママ・エステラのもとで育ったので、フードゥー教はいつもわたしの生活の一部でした。修業をする必要はなかったし、それをはじめるのに何か儀礼が必要というわけでもありませんでした。家のまわりはあなたが子供時代に見るものとおなじでした。母親のキッチンにあるハーブ、コーヒーテーブルの上に積まれた新聞、遊び部屋のオモチャもおなじでした。わたしにとってそれは日々の生活の中に、ごく自然に存在していたのです。
たとえば頭が痛いとき、祖母はけっしてアスピリンを服用することがありませんでした。かわりに特別なハーブやスパイスから「チンキ」を作ったのです。彼女はこの混合剤を服用してから就寝しました。目覚めたときは雨が上がったかのようによくなっていたのです。彼女はいつもベッドの横にキャンドルと白い布を置いていました。それが何であるかわたしにはさっぱりわかりませんでした。ママ・エステラが説明してくれて、はじめてそれがお守りの呪文であることを知りました。