先祖の精霊
わたしたちはよく自分たち自身のことを「知っている」と言います。自分が好きなもの、嫌いなもの、社会文化的なアイデンティティーを知っている、そしてもっとも奥深い思考とつながっていると解釈しています。これらのすべてはすばらしいことです。というのも自己認識の強い感覚を持たないと、今日の世界において自分のやりかたを確立することができないからです。そうでなければこの80億人近い世界の他者と自分をどうやって区別できるというのでしょうか。自己を知ることによって、ほかの人々との違いを際立たせることができるのです。フードゥー教を実践することによって、あなたは否応がなしに一歩進むことになります。あなたは自分のルーツ(根)を知ることが必要になります。あなたの祖先はあなたのルーツ(根)なのです。あなたの前にいた人々は、あなたと血のつながりを持つ人々なのです。
すべての有効な魔術のなかで、血の魔術がもっともパワフルで、もっとも効力があり、もっとも危険だと考えられています。血はあなたの前に生きた人々と直接につながっています。科学的な意味において、あなたの来歴はあなたの血で書かれています。これはつまり科学によって、いかにあなたのDNAが血族と結びついているかということであり、このDNAが何世代もたどれるということです。先祖の魔術は血を超えて伝わるのです。それはあなたの前に生きた人々が残した本質なものを物語っているのです。あなたは誰かがいたからこそ生まれたのであり、その誰かは誰かがいたからこそ生まれたのであり、その誰かは誰かがいたからこそ生まれたのであり……とつづいていくのです。この血統の知識があってこそ、あなたは連鎖のパワーと結びつくことができます。
あなたが祖先を認めようが認めまいが、あなたの祖先がしたことのツケをあなたが返している可能性があるのは本当です。それがいいことなのか、悪いことなのかはわかりません。彼らの行動、あるいは行動しなかったこと、話された言葉、そして感情。これらのすべてが血統に属するすべての人のなかに流れているのです。いままで感情を抑えることのできない人に会ったことがあるでしょうか。その人の血統を調べると、こうした特徴を持った人を発見することになるかもしれません。
ある人々が尋常でない数の幸運を経験するのは、こうした理由からです。それは「幸運の女神」があなたの肩の上に立っているからではありません。かわりに世代から世代へ受け継がれる報いが受けられる何かを先祖がしたのです。不幸にも、その反対もありうるのです。もしあなたの先祖が激しい、重大な攻撃を加えたことによって呪いを引き寄せたのなら、その呪いは子孫にかかってしまうでしょう。呪いや祝福を超えたところに、わたしたちの血統につながるパワーがあります。このパワーを認めることに失敗すると、それがほとんど存在しないと感じるまで、時間を超え、能力を弱めることになります。
それはパワーが突然消滅するということを意味するのではなく、祖先を認識することによって目覚めるまで休眠するのです。自分の銀行口座について考えてみてください。つねに口座の出し入れをしていけば、それはアクティブの状態にあるといえますが、長い間放っておくと、それは徐々に休眠口座になってしまうのです。口座が閉鎖されるわけではないですが、休眠状態に入ってしまうのです。祖先の精霊はわたしたちを導いてくれます。というのも、われわれが見えないものを彼らは見ることができるからです。以前に起こったことを彼らは経験しています。そして彼らが言うように、歴史はおのれを繰り返すのです。あなたが過去の間違いを繰り返さないようにするために、ほかの誰がいるでしょうか。彼らの助けが必要な儀礼をするときに、あなたと直接結び付く精霊は、漂っているだけの精霊と違って、喜んであなたに協力しようとするでしょう。これらの要因についてよく考え、儀礼を始める前にそれらを理解しましょう。
あなたの祖先に敬意を示すために、あなたの家の一部を提供しましょう。祖先の祭壇はフードゥー教にとって重要な場所です。それば祖先をあなたの生活に招く場所だからです。あなたは祖先を呼ぶために祭壇を利用することができます。小さな卓は祭壇にはもってこいです。もし先祖の写真を持っているなら、それらを卓の上に置きます。その横には水の入ったコップを置きます。食べ物やウイスキー、ラムなどのアルコールでもいいかもしれません。毎週欠かさずこの儀礼をおこないましょう。