ヴェーダの世界観の概要 

 バーガヴァタ・プラーナ、マハーバーラタ、ラーマーヤナはインドのヴェーダ文学においてもっとも重要な三大典籍である。これらはヒンドゥー教の聖典としてよく知られているが、単純に神話や宗派の教義が書かれた経典とみなされるべきではない。その本当の価値は、まったく異なる世界の見方を詳しく示し、そのなかに生きていることを明かしている点なのである。高度に発展した人間の文明がそのあと数千年にわたってつづいた。

 現代のインド学から見ると、バーガヴァタ・プラーナは9世紀に、マハーバーラタとラーマーヤナは紀元前5、6世紀に編集されたものである。しかしながら現存するテキストの材料は、歴史時代よりずっと前に書かれたとインド学の学者も認めている。プラーナという言葉自体が古代を意味し、インドの言い伝えによれば、これらは少なくとも紀元前3000年にさかのぼることができるのである。

 さてここで「ヴェーダ」という言葉にたいし、専門的な注釈をつけたい。現代の西欧の学者たちは、この言葉が適用されるのは四つのヴェーダ、すなわちリグ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダだけだと主張する。しかしながらインドの伝統的社会のなかで生活すると、ヴェーダがもっと広い意味の文学のカテゴリーに適用されるのがわかる。つまり古代の宇宙の見方であるプラーナ、歴史的叙事詩であるイティハーサ(Itihāasas)も含まれている。バーガヴァタ・プラーナは18の根本プラーナのひとつであり、マハーバーラタとラーマーヤナはイティハーサである。それゆえ私はこれらの作品について述べるとき、四つのヴェーダとともにヴェーダという言葉を使いたい。