内なる旅 

神とは誰か 

信仰の道を完全に描くのは不可能だ。至高なる者とつながる愛の海はあまりに大きく、誰もその大きさを測ることができない。しかしながらあなたがそれを味見したいのなら、一滴だけ描いてみせよう。

  シュリー・チャイタニヤ『チャイタニヤ・チャリタムリタ』
                 マディヤ・リラ 19―136 

 

(1)

 アセンズは、肥沃な農地とうねうねと続く丘陵に囲まれたオハイオ州東南部の小さな町である。1980年代前半、お店のほとんどは家族経営で、店舗は木とレンガでできていた。町の中心には1870年に建てられたオハイオ大学があった。1980年代、生徒数はおよそ1万5千人だった。

 秋がキャンパスの木々の葉を明るい黄色、オレンジ色、赤色に染め、芝生の上に色とりどりの絨毯を敷いたのを覚えている。ほのかに暖かい陽光がさすだけの、さわやかな日だった。涼しいそよ風に吹かれて、綿毛のような雲が空を流されていった。

 大きなオークの木の近くの草の上に坐っていると、ひとりの若い学生がやってきてわたしと考え方を共有しようとした。しかしわたしは芝生の向こうで起こっていることが気にかかり、気もそぞろだった。およそ百人の騒々しい群衆が木箱の上に立つ牧師に向かって野次を飛ばしていたのである。

「姦淫だ!」牧師は轟くような声で言った。そして手を絡み合わせているカップルに向かって叫んだ。「悔い改めよ、さもなくば、地獄へ落ちよ」。

「おまえは神を冒涜している! 悔い改めよ、さもなくば地獄で燃えよ!」彼は喫煙者に対して叫んでいた。缶ビールを持っている若者に対しては吠えたてた。「罪びとよ! サタンがおまえを待ってるぞ!」

 面前で生徒たちにひやかしを浴びせられても、彼の信念はゆるぎなく、平静が保たれていた。50メートル離れたところからわたしは見ていた。するとひとりの学生がわたしを指さして叫んだ。「こいつはどうなんだい? ヒンドゥー教徒だよ。こいつはどこへ行こうとしてるんだい?」

 牧師を囲んでいる人ごみが開いた。彼はわたしをじっと見て叫んだ。「こいつは永遠に地獄の火で焼かれることになるだろう」

「なぜそのことを彼に直接言わないんですか」

 煽られた牧師は後ろにたくさんの人を引き連れて、速足でこちらにやってきた。わたしは彼の靴が秋の枯葉を踏みしだく音を聞いた。数秒後、学生の輪の中央に坐るわたしが見上げると、立ちはだかる牧師の姿があった。囲む人の数はすぐに倍になった。牧師は二十代後半のようだった。彼は体格に恵まれ、ワイシャツを着てネクタイをしめていた。彼は目と顔を真っ赤にして、わたしに向かって叫んだ。「異教徒め! あなたには地獄行きの刑を宣告する!」

 学生たちは固唾を飲んだ。あきらかにスワーミーと地獄の責め苦を説くキリスト教の牧師との決闘が始まろうとしていた。二つのライバル関係にあるフットボール・チームのようだった。彼らはわたしの反応を待っていた。

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