ラクシュミー・タントラ 第5章
プラクリティ(物質原理)から生じる物質世界の進化
1−6
ハリ(ヴィシュヌ)の第一の「私であること」はすべての形象となった。それは永遠であり、純粋な至福となり、意識となった。それは絶対的な非活動(すなわち私自身)である。同一なるもの、すなわち「私」は創造しようという気持ちに駆り立てられ、純粋なる創造物へと進化した。そして私自身、無限小の原子となった。純粋で、6つの神聖なる性質を持つ形象の創造物となったのだ。私自身の(超越的な)形象を変えることなく、マハーラクシュミーと呼ばれる私自身の小さな部分は、3つのグナ(性質)を有するものとなる。
ここに(進化の過程において)マハーシュリーと呼ばれるラジャス(活動)、すなわち至高の女神に私が支配されるとき、タマス(非活動)に支配されたわが形象はマハーマーヤーとみなされ、サットヴァ(調和)に支配されたわが形象は、マハーヴィディヤーとみなされる。私自身(マハーシュリー)と二人の女神(マハーマーヤーとマハーヴィディヤー)はみな創造しようという気持ちに駆り立てられ、3つの形象に応じて、3つの対を創造した。わが形象と一致するように、これらは美しく創られた。
7
これらは蓮の(形をした)目を持った、見た目のよい、蓮の上に座した、わが形象を基にした心の創造物であり、プラディユムナから創造された黄金の卵(宇宙卵)を孕んだ。*ヒラニヤガルバ(黄金の卵)と呼ばれる一対の両親は、マハーシュリーとプラディユムナである。
8−15
この対の男はダーター、ヴィディ、ヴィリンチ、ブラフマーとして知られ、女はシュリー、パドマー、カマラー、ラクシュミーとして知られる。サムカラシャナの部分から生まれたマハーマーヤーのなかに心において創られた対は、3つの目を持ち、身体のすべての部分において美しかった。
ここにおいて男はルドラ、シャムカラ、スターヌ、カパルディー、トリローチャナと呼ばれ、女はトライー、イーシュヴァラー、バーサー、ヴィディヤー、アクシャラー、あるいはカーマデーヌ、ゴー、サラスヴァティーと呼ばれた。
アニルッダから生まれたマハーヴィディヤーから生じた対の男は、ケーシャヴァ、ヴィシュヌ、フリシケーシャ、ヴァースデーヴァ、ジャナールダナだった。女はウマー、ガウリー、サティー、チャンダーで、美徳と貞節に満ちていた。
わが命令によって、トライーはブラフマーの、ガウリーはルドラの、アムブジャー(パドマー)はヴァースデーヴァの妻となった。これらのラジャ、タマ、サットヴァの対の進化によって、第一の創造の場面は終わる。よく聞け。グナの進化の中間の段階を私は語ることになる。
16
ヴィリンチは、バーサーとともに、(宇宙)卵を産んだ。わが命令によって、シャムカラとガウリーはそれを破壊した。(卵を割った)
17
ブラフマーは卵のなかにプラダーナを創った。ケーシャヴァはパドマーとともにそれを保護した。
18
このようにグナの中間の段階が述べられる。さて私が第三の段階を述べるとき、私が語ることを耳を澄ましてよく聞け。
19
卵(宇宙卵)に存在するプラダーナ(原理)は、実在と非実在から成っている。それは根源として3つのグナでできている。すなわち空(ヴヨーマ)の本性、すべての根源、腐食せざるものの3つである。
20−21
それからこのアヴヤクタ(顕在しないもの)と呼ばれるプラダーナ(原理)を水に変える。その水の上に神フリシケーシャ(hrsikesha)がパドマーとともに、ヴィディヤーを伴って現れるとき、神は深い眠りに就く。そしてマハーカーリーと呼ばれる者(女神)がタマ(非活動)で構成される眠りとなる。
22
それから、おお、プラムダラよ。神が眠っているとき、そのヘソから蓮が生えてくる。この泥(パンカ)から成長したのではない蓮パンカジャは、時間から構成されるのでカーラマヤと呼ばれる。
23
それはまたジャラーディカルナ、パドマ、アーダーラ(根本)、プシュカラ、チャクラ(時の輪)、プンダリーカと呼ばれる。
24
シャクラ。実在するもの、意識あるもの、意識ないもの、それらすべてが述べられた。有情のものは意識からなると言われる。3つのグナから成る無情のもの。限られた時間がどうやって生まれたのか? *無限の時間はヴィシュヌのヘソから生じる蓮である。
25−26
シュリー。限られた時間は非意識から構成される。そして限られた3つのグナから成る。宇宙が進化する間、先に述べられた6つの(聖なる)属性のうちのバラなどの3つ(バラ、アイシュバルヤ、ヴィールヤ)が進化し、時間となった。3つのグナが進化するという段階において、この3つの属性は不変である。*bala(強さ)aishvarya(権力)virya(たくましさ)
27−29
時間とそれによって生じたものの対(カーラとカールヤ)は、非意識と言われる。その時間は「私」によって構成され、さまざまな物体を創造するため、わが女神(シャクティ)に使われる入れ物として活動する。ヴェーダ聖典を持ち、トライーを伴って、ヴィシュヌのヘソに生じた蓮から現れる時間(永遠)から成るものは、かつてラクシュミーから現れ、ヒラニヤガルバと呼ばれた力強いブラフマーである。
30
トライーはマハーカーリーから現れた女である。つまりこの対(ブラフマーとトライー)は、ヴィシュヌのヘソに生じた蓮に生まれたのである。
31−32
蓮とそれから生じた対の三者(蓮とブラフマーとトライー)は、古代の知恵ある者が言ったように、マハーンと呼ばれる進化する原理で構成される。それはタマ(非活動)から成り、マハト(偉大なるもの)であることから特徴づけられる。この3つとは、生命原理(プラーナ)、男性原理を表わすヒラニヤガルバ、女性原理を表わす叡智(ブッディ)である。