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(テントの前で巨大な犬がウーと唸っている)

「いま驚かした犬だな」(ギャツァ)

「こいつも妖怪変化かもしれんぞ」(センロン)

(センロン、テントに向って叫ぶ)

「おーい、だれかいるか? われはセンロンだ。頼みがあって来た」

(中から声が返ってくる)

「フール、こっちへ戻っておいで! このふたりを追い立てちゃだめよ!」

(すこし幕を開けて外を見る)

「なぜあなたたちが来たか知ってるわ」

(父が息子を疑いの目で見る)

「見ないでよ、親父。おれ何も言ってないから」

「でも知ってるなら話は早い」

(つぶらな瞳で男たちを見る美少女)

(犬を撫でながら少女は言う)

「話すこと、何もないよ。死んでも行かないからね」

これがセンチャム・ドゥクモ。リン部落キャロ家の娘。


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