120−121
「いや、そういう意味じゃないよ。ぼくの家は北にあるんだけど、強盗が多いからいっしょに行ったほうがいい、といったんだ」(少年、はにかみながら言う)
「そ、そうなの……」(戸惑い気味の少女)
「助けてくれてありがとうございました」(少女、あらたまって頭を下げる)
「いや、罠を仕掛けたのはぼくだから、あやまらないといけないのはこちらだ。馬を捕まえようとしたら、あんたがかかってしまって……」(照れながら話す少年)
「あ、たいへん!」(少女、犬のことを思い出して叫ぶ)
「フール、あんた大丈夫!?」
(少女、木の下でのびている犬に駆け寄る)
「気づいたみたい!」
「あんたが飼っている犬? 名はフールっていうの?」(少年)
「そう、忘れちゃいけないわね」(少女)
「で、あなたの名は?」(少女)
「ぼくはジョル」「わたしはドゥクモ」
ハハハハ
(笑いながらふたりとも気づく)
(少年のアップ。記憶がよみがえる)
「ドゥクモだって?」
(記憶の中でドゥクモの父が叫ぶ)
「牛を殺したのはジョルだ! 娘のドゥクモがその目で見たのだ!」
(少女ドゥクモのアップ。羊の頭骨を頭につけた少年の姿がよみがえる)
「ジョ、ジョルだって?」
「お、おまえはあのドゥクモ!?」「あんたはあのジョルね!?」
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