008009 

(ヒュルルルー、ヒュルルルーと風が吹く荒野。灰色の風景)

(ふたりの男の影)

(いや、ひとりは馬だった。冠をかぶり、人のように座る馬)

(もうひとりはケサル)

(荒野ではなく、波が荒れ狂う海だった。彼らは帆のついた丸太の筏に乗っていた)

「キャンゴ・ペルポよ、道に迷ってしまったようだ」「食べ物もあとわずかだが、もうひとふんばりがんばろう」

(バタッと馬のキャンゴ・ペルポ倒れる)

「キャンゴ・ペルポ、死んじゃだめだ!」

(グーグーという寝息。馬は寝ているだけだった)

「あれ、寝てたのか」

「腹が減ったときは寝るが一番か」

(ケサル少年、横になる)

「寝ないって手はないな」(と眠ろうとする)

「おなか減ってない、おなか減ってない、羊が一匹、羊が二匹……」

「えっ」

(ケサルと馬、なにかを見て驚く)


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