アッラーの名のもとの
ケサル詩人
敬虔なるイスラム教徒
(神秘主義的なヌールバフシュ派)にして
チベットのケサル王英雄詩を歌う、
80歳の賢者。
パキスタン、バルチスタン地方
Muslim
Gesar bard from Baltistan, Pakistan
「ほらあの岩壁に赤いしるしが見えるじゃろう。
あれはブルクモ(ドゥクモ)の首飾りじゃよ」
半盲の老ケサル詩人は
さもそれが昨日起こったことであるかのように語った。
ケサル物語のなかで
最愛の妻ドゥクモはホル国の王にさらわれてしまう。
ドゥクモはケサルへの未練が断ち切れないのに
ホル王の子をはらんでしまう……。
とてつもなく長いケサル王英雄物語のなかでも
最初のクライマックスは
ここパキスタンの北部で展開したという。