ともかくも、よくわかったのは、わたしたち夫婦はペットなしでは片時も生きていけないということだった。かくしてわたしは動物保護センターに犬を探しに行ったのだが、このときは、わたしの心をとらえる犬がいなかった。そしてまたしても、猫を飼ってみてはどうかしらと、ジャニーンが提案してきた。彼女の友人が生後六か月の子猫の引き取り手を探しているというのだ。留保をつけながらも、わたしは子猫を引き取ることに同意した。

 子猫は短毛の在来種で、茶色のとら猫だった。わたしはとりあえず「野良」と呼んだ。胸と足先は白く、白ワイシャツを着て、手袋をつけているように見えた。輪や巨大な指紋の渦巻のような模様が背中を覆っていた。額には殴り書きのMのような印がついていた。ほかのとら猫と区別するためにシールを貼ったかのようだった。

 わたしたちは猫にラビット(うさぎ)と名づけた。毛並みがうさぎと似ていたからである。そのぱっと見以外に私はラビットについて何の情報も持っていなかった。まるで都市のアパートのバスタブで生まれたかのようだった。ラビットはとてもすぐれた脚を持っていた。だから必要なことはなんでも自分でできそうだった。多くの子犬がぷっくりと太っているのにたいし、ラビットはガリガリにやせほそっていた。それにどんな犬よりもわたしを批判的な目で見つめた。

 猫はしばらくのあいだだけ私のひざの上にすわることに同意した。そしてジャニーンがからだを撫でると、猫は控えめにゴロゴロとのどを鳴らした。わたしはいつも子犬たちがキャンキャンとほえるのを楽しんでいたが、猫の満足げなゴロゴロにも悪い気はしなかったと認めねばならない。

 とはいえ、猫の生活において、人間はもっとも重要な要素というわけではないことに気づかされることになる。とくに慣れていない子猫が解決すべきことは山ほどあった。わたしたちにできるのは、猫と一緒に観察し、理解しようとつとめることだった。


⇒ つづく