オカルト・アメリカ
第10章 売り物の秘密
売り物の質がよくないとき、私はよいビジネスをすることができる。思うに、教会にもおなじことが真実だと言えるだろう。
――『占星術師の司祭』よりゾラー ニューヨーカー(1959)
19世紀終わりから20世紀はじめにかけてのヨーロッパのオカルト・ロッジは、秘密厳守の上に成り立っていた。神智学協会のアニー・ベサントは組織からエリート集団の分家を精力的につくり出した。結社の中に結社をつくり、隠れたロッジをつくり、ロッジそれぞれが記章、印章、独自の儀式を持っていた。ヨーロッパに復活したオカルト教団のなかでも、卓越した組織を持っていたのが黄金の暁(あかつき)教団だ。イニシエーション(参入儀礼)の際、新入りに秘密の教義と秘儀が伝授される前に、厳しい段階的な修練を経なければならない。
1920年代のアメリカにはじまったオカルトへの傾斜は、すぐに粉々に砕けてしまった。都市部や農場共同体のごく普通の母体で育った教師や監督の世代は、オカルトの思想と戦い、世紀半ばには、人々を秘密のロッジから引き離し、隠されていたものを聴衆に広くさらした。オカルトの占星術や数秘学は衰退したが、かろうじてブリッジゲームやクロスワード・パズルに形を変えて広く普及した。