住居(別紙参照)
図はマパの民家の平面図である。横幅が20㍍、奥行きが35㍍もあり、200坪ほどの敷地面積はかなり大きな部類に入るが、平均的な民家でも80坪ぐらいはある。特徴的なのは、長方形の建物の中央が畜圏(lhas ra)になっていることだ。といってもほとんどの場合、家畜は前門を入った脇か敷地外に設けられた家畜小屋に収容されていて、ここは中庭として使用される。
中庭を取り囲むように、小麦など収穫物を貯蔵する部屋や農機具置き場などの部屋もあり、畜産と農業の両者とも生活の核になっていることが、部屋の構成にあらわれている。
前門は通例南に面していて、門内側の左右に家畜部屋、トイレがある。牛糞をパイ状に固め、壁に貼り付けて乾燥させる家も多い。良質の燃料を得るためである。北側の奥には厨房兼食堂の部屋がある。西北隅の部屋が通例母室(ma khang)とよばれる客間。東北隅の部屋は物置庫であったり、客用寝室であったりして、一定ではない。
チベット人の民家に欠かせないのは仏間(mchod khang)と香炉(bsang khung)だ。仏間には家族の噂好や信仰に応じて観音菩薩像やパドマサンバヴァ像が祭ってあったり、パンチェン・ラマの写真が飾ってあったりする。香炉は多くは中門(nang sgo)を抜けたところの中庭の隅に置かれた瓶形の香炉であり、ここで杜松の枝をくべて起こした焚香(サン bsang)を神に献納する。
マパでは際立っていないが、とくにテウやソグル、ニェントフなどでは村を取り囲む外壁が五㍍にも達し、村全体が要塞のような外観を呈している。各家の壁も高く、前門も頑丈にできており、外敵にたいしてきわめて堅固である。何百年にもわたって戦争や強奪が頻繁に発生したという歴史的経緯もあるが、半世紀前にも回教徒の侵略があり、過去の遺物とはいえない。