レコンの宗教民俗
チベット人にとって、また土族にとっても、宗教活動は生活のなかでもっとも重要な要素であり、毎朝の焚香から一年に一度の新年(ロサル)や祭礼(ルロル祭)、あるいは経典読誦まで、あらゆるレベルでの活動が含まれている。つぎの行事・カレンダーを見れば、宗教活動がどれほどさかんであるかが明瞭にわかるだろう。
民間行事・宗教儀式カレンダー
サフチ
毎月10日 ツェチュの経典、たとえばグル・レウドゥン経(gu ru le'u bdun)読誦。カンガ経(bskang ba)読誦
毎月11日 カンガ経(bskang ba)読経。
正月元旦 ロサル(新年)。
正月3日 3歳になった長男を祝う儀式。
正月12日~16日 ロンウ寺のモンラム祭(12、3日 賽馬。14日 タンカ開帳。15日 弥勒仏出巡。16日 宗教仮面劇チャム)
3月13日~17日 ヤマラジャ経(ya ma ra dza 閻魔王経)読誦。
4月1日~15日 村人はあつまってニョンニ(斎戒 smyung gnas)をおこなう。
4月11日 ラブツェ(la btses)を立てる。(ルロル祭中の6月17日も)
5月5日 チュコル祭(chos bskor)。経典を背負い田野の間を歩いてまわる。五穀豊穣祈願。
6月1日 馬に乗ってシャチョン山へ。
6月4日 シャチョン山の麓にテル (伏蔵袋)を埋める。(詳細は後述)
6月16日~19日 ルロル祭
10月25日 ンガッパたちは午前中ゲルク派の経典を、午後ニンマ派の経典を読誦。
11月25~29日 センドン経(seng gdong 獅面母祈祷経)読誦。
12月5日~9日 ドゥッカル経(白傘蓋仏母経)読誦。
12月15日 シャチョン神廟中のロトル(lo gtor)を替える。
12月16日~ カンガ経読誦。
テウ
毎月10日 ツェチュの経典読誦。
正月元旦 ロサル。
正月23日~30日 ドゥッカル経(白傘蓋仏母経)読誦。
4月1日~15日 ニョンニ(斎戒)。
5月4日 ラブツェ祭。
5月5日 ハツォ (lha tshod祭。
6月4日 チュコル祭。
6月21日~25日 ルロル祭。
11月23日~29日 サンドン経読誦。
12月1日~4日 ドゥッカル経(白傘蓋仏母経)読誦。
ソグル
正月元旦 ロサル。
2月11日 子供のためのラブツェ祭。
4月14日~15日 ニョンニ(斎戒)。
5月5日 ハツォ祭。
5月9日 ラブツェ祭。
5月15日 チュコル奈。
6月20日~25日 ルロル祭。
マパ
正月元旦 ロサル。子供たちは「お正月」をもらいに村中をまわる。年長者は食べ物をあげるのだが、「年をあげる」(lo ster ba byin)という。そのとき長寿祈巌のことばをのべる。
元旦はみな初詣のように神廟に参り、山神にサンを献じる。それから年寄りの家を訪ねてロ(年)をもらう。近くの親戚の家に贈答品をもっていく。亡くなった人がいる家には酒をもっていく。午後、村人があつまって歌をうたうことがある。
4月15日~ ニョンニ。昼間、断食潔斎をはじめたい人々がマニ堂にあつまり、チョマ(人参果 gro ma)にバター、砂糖をまぜて煮たものを、コレ(パン)とともに食べる。寺、活仏、家になじみのある僧のところを訪ね、油であげたコレを差し上げる。
5月5日 チュコル。経典を背負い、マントラを唱えながら田畑の間を練り歩く。曲がり角や行き止まりでは焚香を献じる。
5月15日 ラブツェ祭。各家の代表が矢(ダヒュン mda' shing)と飾り枝(タグ・タウ stag rta'u)をもって将軍廟(マッホン・カン dmag dpon khang)にあつまり、神にサンを献じる。廟の裏にラブツェがあり、そこに矢を挿し、飾り枝をとりつける。終わったら、木の下で歌ったり、酒を飲んだりする。
6月21日~25日 ルロル祭。
9月22日 グニェルニ(九・二二)。
10月25日 チュニェルンガ(十・二五)。
12月晦日 夕方六時半か七時頃、村人があつまってきて、焚香を献じる。火を燃やし、コレを投げ入れて死者にささげる。子に恵まれない夫婦がコレをささげると、翌年にはこどもを授かるといわれる。年寄りが「年」をもらいに来るので、女性たちは肉を煮て準備をしなければならない。夜、肉とモモ、グトゥク(臘九粥 dgu thog)を食べる。グトゥクは食べきれないほど作らなければならない。
ロンジヤ・マル
正月元旦 ロサル。
1月10日 ツェチュ経典読誦。
1月18日 ザムロンチサン('dzam gling spyi bsang)という大きなサンを焚く儀式。未婚の女性たちは矢を片手にもち、歌ったり踊ったりしながらサンの周囲をまわる。ハワはことしについておつげをする。
5月5日 チュコル。
6月17日 ラブツェ祭。
6月20日~24日 ルロル祭。
7月 カジュ経(bka' brgyad)読誦。
12月 家にこもって瞑想する。
12月晦日 ハワは神憑かって殺したヒツジの心臓を取り上げる。
*ボン教部落(ロンジャ・サソマ)では1月5日~8日(最大は7日)と10月8日~11日(最大は10日)にチャム(宗教仮面劇)をおこなう。ルロル祭に代わるイベントである。ただし会場は六つのボン教村で順繰りにまわす。(ボン教の項参照)
ニェントフ
正月元旦 ロサル (春節)。
1月8日~13日 モンラム。(12日、タンカ開帳)
4月10日~15日 チョパ (mchod pa)。
4月14日 ニョンニ。
5月4日 ラブツェ祭。
5月5日 ハツォ祭。
5月8日 チュコル祭。
6月20日~25日 ルロル (ナートゥン)祭。(最大の盛り上がりは24日)
11月8日 バン祭(bang 或 lha skor)。神を回る、の意。夜、男女があつまって踊ったり、歌ったり (ラーイー)する。
11月20日 ウトゥ祭(o'u th'u 或 stag)。ウトゥとは古代中国語の於菟(おと)であり、虎をあらわす。前夜から各家庭は「悪いもの」をこめてかまどでドーナツ型のパンを焼く。
翌20日は一年で「もっとも悪い日」とされる。選ばれた七人のウトゥ(かつて八人だったが、銃の暴発でひとり死亡して以来七人)は、村の背後の丘にある二郎神廟にあつまり、半裸になって(かつては全裸)灰を全身に塗りたくる。
村の絵師がその上に墨で虎の画を措く。腹と背中の虎面は憤怒相である。廟の後ろのラブツェから挿されている樺(stag pa)の飾り枝を削ってスティックとし、それをもって廟前に整列し、二郎神に祈りをささげてから、ハワに率いられて、いっきに村里のほうへ駆け下りる。
ウトゥたちは「門から入ってはいけない」ので、五メートルの壁を乗り越えて中庭に侵入し、壁伝いにほかの家に移動する。各家庭はウトゥに酒と肉でもてなす。虎のように、生の羊肉を食らうことがある。路地を走るときは、村人はみなドーナツ型のパンを触り、ウトゥはそれをスティックでキャッチする。
ウトゥは最終的には氷結した川にたどり着く。そこで串刺しになった大量のパンを投げ捨て、厄払いする。さらにウトゥは氷に穴をあけ、冷水をからだにかけて(というより、なすりつけて)沐浴をして、身を清める。
12月8日 ロバゴタン祭(lo pa go thang 或 du nyeg)。各家庭で豆ご飯を作ったり、大掃除をしたりする。門前、屋根の上、田畑などに氷塊を置く。
12月24日 ゾウネネ祭(tso lpu ne ne 或 thab lha)。ゾウネネ、タプラはかまど神の意。おそらく竈王ナイナイ。かまどの修理をし、サンを焚く。「いい友よ、来い。敢よ、出て行け」と唱える。この日は漢族の小年であり、かまど神を祀る風習は中国全土に見られる。吉林省には「竈王ナイナイ回娘家」という説話が伝わる。註1
トルジャ
正月元旦 ロサル。
5月5日 チュコル。
6月6日 ラブツェ祭。
6月17日~24日 ルロル (ナートゥン)祭。
8月15日 ジャペチョンガ祭(brgyad pa'i bco lnga)。
12月17日 ホィフン祭(dpe shong)。
サンゲション・ヤンゴ
年三度 チョコル祭。ハワが神懸って期日を決める。マニ車をもち、経典を背負い、オーンマニペメフームと唱えながら田畑の間をまわり、サンを焚く。
正月元旦 ロサル。(マパと同様)
2月2日 ラブツェ祭。樺(ここではニョンル nyung ruという)の枝を挿す。
2月と4月 ニョンニ。
5月5日 ハツォ祭。ニラで作ったツォマを食べる。川辺で儀式をおこなう。
12月晦日 (マパと同様)